精神科に頼っている人間に没個性なキャラはいないけれど、その中でもタチのわるい患者が集まっていると言ってもおかしくないだろう。
カオル兄さんはとってもいい人だけど、何度も何度も繰り返し入院してくる超リピーターだからこの部屋に入れられている。
そして拓也ちゃんもこの部屋の住人だ。
病院側からしてみたら、拓也ちゃんも重要参考人らしい。
俺は拓也ちゃんと一緒に入院したのは初めてだから、拓也ちゃんが何をするにも面白くて楽しい。
ある日拓也ちゃんは、あの喫煙室以来初めて俺に声を掛けてきた。
俺が徹、勇志さん、アオちゃんの四人でブリッジをしていたときだった。
「あのう、俺と一緒にお菓子食べませんか?」
俺はお菓子や食事に一切の興味を失っていたし、丁度ブリッジがいいところで俺は三連勝する所だったので、
「また今度誘って」
と答えた。
拓也ちゃんは残念そうにデイルームの端っこに行って、ポテトチップスをしゃくしゃくと食べていた。
俺は拓也ちゃんと一緒に遊んでもいいかな、と思ったけど、拓也ちゃんはブリッジは出来ないし、もし仲間にするといったら勇志さんがいなくなってしまうんだろうなと思ったら、やっぱり今は断わってよかったと思う。
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