「で、湊の好きだった男って見た目どんな感じなの」
徹が聞いてきた。またつまらないことに食いついて、俺をいじめようとする魂胆かもしれない。

「お前より痩せててガリガリで、背はお前より低い。真面目だけど行き過ぎて性格はどっちかっていうと悪い。だから俺を捨てたの」
「お前、性格曲がってるから男の趣味も曲がってるんじゃねぇの?大体子持ちの男のどこがいいんだよ」
「お前よりはマシだよ!」

俺がキレると勇志さんが止めに入る。

「ハイハイ落着いて。いいか、徹。お前も同級生に喧嘩吹っかけるようになったらお終いだぞ。ヒロキちゃんも。徹に喧嘩売らないように。売ったら必ず倍にして返す男なんだからね。わかってるだろ二人とも。小中って一緒だったんだから」
「俺はその小中をコイツのおかげでダメに暮らしてきたんだ。今更再会してハーイコンニチハなんて言ってられないよ」
「オレだってゴメンだ。勇志さん、コイツって気が強くて可愛げ無くてめちゃくちゃバカにしたくなんない?今なんて見てみろ、ガリガリに痩せちまって骨しかねーじゃねぇか。小中学校の時なんか笑っちまうよ。小学生で七十キロ超えてたんだぞ。バカだよこいつ」
「バカで悪かったな!」

テーブルの上に置いてあったアルマイトの灰皿をカコンと徹の頭に投げつけてやった。
徹は痛そうな表情も見せずに黙って俺を見て、それから
「勇志さん、先に部屋に帰ってるから」
と言って喫煙室から出て行った。
俺は徹を怒らせるのが得意だ。
勇志さんの前では徹は暴れないから言いたい事が言えてスッキリする。
すると徹と入れ違いに、珍しい人物が喫煙室に入ってきた。

拓也ちゃんだ。

拓也ちゃんは煙草は吸わない。
と言うよりも、自発的に移動を試みたりしない。
いつもいつも、ベッドの上であらぬ方向を見てぼんやりしているのが常なのだ。
そんな拓也ちゃんを見て俺も驚いたが、入れ違いになった徹も訝しそうに拓也ちゃんを見て、それから納得できないような表情で部屋の方に戻っていった。



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