という訳で勇志さんと俺の出会いは、俺が短大生だった時になる。
俺はその時も男に振られて自殺未遂を起こして病院に連れてこられたのだった。
勇志さんはモテる。

勇志さんは、少し小太りだけどしっかりした体格で、指だけはピアニストらしく長くて繊細で、大学出だから教養もあって、髪の毛はちょっと天然カール入ってて、人当たりがとてもいいから入院患者の人気者だ。特に女の患者には人気があって、ものすごくモテる。
それは勇志さんの人当たりのよさと身につけた教養や知識のせいだと思う。

俺は、勇志さんを男性として好きだと思った事は無い。

だから他の患者がどうしてそんなに勇志さんにこだわるのか全然わからない。
大体、俺は太ってる男は好きではないのだ。

でも勇志さんは優しい。俺みたいな落ちぶれた人間にも優しい。
本当なら自分の病気でいっぱいいっぱいになってるはずなのに、他の人の相談ごとも聞いてくれる。
とってもいい人だ。
あのいじめっ子の徹が大人しく言う事を聞いてるのは勇志さんがいるからだと思うとやっぱり勇志さんはすごいと思う。

「僕はねヒロキちゃん、実はね、前にね、カオル兄さんにフェラしてもらったことがあるんだよ」

照れ笑いをしながら勇志さんは下ネタも連発する。

「カオル兄さんは君と同じゲイなんだけど、結婚は一度してるんだよね。僕は独身主義だから結婚はしない。女性は怖いからね。でもカオル兄さんなら後腐れが無いでしょう、それでね、男子トイレに入って、こう、ね?」

と、下半身をしごく動作をした。
俺は笑ってしまった。
大柄のカオル兄さんと、小太りの勇志さんが小さな個室(しかもその個室にはカギがついていない)でフェラしている姿を想像して可笑しくなってしまった。
勇志さんはこんな風に笑わせてくれる。

徹はいつも勇志さんの隣でちょこんとしている。
徹は勇志さん以上にタッパがあって体重もそれなりにある大型恐竜だけど、勇志さんのとなりで大人しく話を聞いてるときはセントバーナードみたいに見える。

デイルームの隣には喫煙室が設けられていて、俺は自分の部屋よりもそこに居座る時間の方が長い。
煙草の煙を吸っているのが気持ちいいのだ。
俺は院長から喫煙の許可が降りていないから、毎週の購入日の時に買うお菓子と、誰かの煙草を交換して煙草を吸っている。
俺はそれを大事に吸いながら、時には途中で吸うのを止めた煙草もきれいに取っておいて後で吸ったりもしていた。
俺と勇志さんと徹はいつでも喫煙室の中で話をした。



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