俺の体重はこの繰り返しだ。
学生時代の写真を見ると、撮った日付によって別人に見える。
太っていたり痩せすぎていたり、誰なのかわからないくらいマトモな体重で平凡な人間に見えたり。
俺は色んな俺になる。
俺の顔は平凡だ。
太るとデブサイクになるし、痩せると貧乏くさい顔になる。
可愛くは無い。
美形というタイプでもない。
奥二重の重たい目と小さな口。
髪の色は金色に近い茶色だけど、今は入院していて髪の毛を染められないから毛の生え際が黒くなってきていてプリンの状態だ。
髪の毛の色も気になるけど、俺はそれ以上に眉毛が心配だ。

俺はリストカッターだから、個人的な刃物の使用は病院内では一切認められていない(それは他の患者も同じだ)。
眉毛を剃りたい。
俺の眉毛は元々とても太くて濃くて、もしかしたら眉毛と眉毛の間が繋がりそうな勢いだ。
その処理を何とかしたい。
カミソリは貸してもらえないし、このままだと俺の眉毛は繋がってしまう。
カモメみたいになってしまう。
それだけは嫌だ。
勘弁してほしい。
ただ、病院には理容室が備えられていて、俺は来週そこに行って顔の産毛を剃ってもらうつもりだ。
そのついでに眉毛も整えてもらおう。
どうせ腕の下手な理髪師だろうけど、この際文句は言っていられない。

来週は徹も理容室に行くと言っていた。
徹は髪を伸ばしていたけど、いい加減うざくなったんだろう。
髪を短くして早く退院してやると言っていた。
髪を切ったからって退院が早くなるとは限らないと思うんだけど。
でも徹にそう言うと平手打ちされそうだから言わない事にした。
俺と同じように退院と散髪には関係性が無いって言う事に気がついてそれを指摘したアオちゃんは、徹に平手じゃなくてグーで殴られていた。
アオちゃんはそういう人のご機嫌伺いみたいなのが出来ない。
ここに入院している人間の殆どが、そう言った社会通念を理解していないのはある意味当然だと思うけど。
アオちゃんだけが世渡り下手な訳ではない。
俺も、すぐ怒る徹も、勇志さんも拓也ちゃんも、皆外の世界でうまく立ち回れなかった人間だ。
負け組みという奴だ。
負け組みには、負け組みなりの掟があると俺は思う。



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