入院して五日目。

三回目の入院だからもう飽きてきている。
つまんねぇ。規則で縛られてる生活は面白くない。

朝七時の朝食、その後の薬、九時の掃除、十時の検温、昼食、その後の薬、昼寝、午後三時の手当て、六時の夕食、その後の薬、八時半の薬。
毎日同じで単調だ。

最初の入院は十四歳の時。

次は十八歳の時。
三回ともリストカットと拒食症状が原因だ。

今回はそれにプラスして、医者は「鬱状態」とカルテに記入したらしい。

別にどうってことない。病名なんてどうでもいい。

精神科の入院は、最初の二週間くらいは楽しいけど、その内飽きてくる。
その二週間は、他の入院患者の様子を見て、どんな病名を貰ってるのか推測するのが面白い。
正しい病名を当てているかどうかは解らないが、想像するのは楽しい。

それもしばらくすると飽きてくる。
患者の顔と名前が一致してくるからだ。
こういうゲームは匿名性があった方が面白い。

だから俺は、今度は日記を書くことにした。
これは退院まで続けられる。
面白い。
入院生活は暇で時間がたっぷりあって、日記を書くには十分すぎる。
一日に大学ノート十枚を使ってしまう事もしばしば、ある。

特筆するような事件は、実際にはそんなに起きない。
けれど、名前と顔と病名が一致した患者について一人一人書いていくと、想像も含めて十枚は軽く書ける。

想像。
想像が含まれているから書けるんだ。
本当の事ならそんなには書く必要が無い。
簡潔に、短い言葉で表現したらいいだけだ。
想像の世界を書くから面白いのだ。
これはいい趣味だと自分でも思う。

俺の名前は湊ヒロキ。
二十三歳。
リストカット歴十年。
摂食障害歴十年。
拒食と過食を繰り返して、体の中はボロボロ。
左手首もボロボロ。
内臓も皮膚もいかれまくっている。


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