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近が、擬似依栖の肩を抱いている。
その隣には、虚ろな表情をした少女エスがよろめきながら立っていた。
圭の脳が白く光った。
また、何かを思い出しそうになる。
何だ?
何が俺に残っとる?

「ジブンが全人造になったら困る事があんねん。こっちはな」
「どういう意味や」
「お前しか、エスと依栖を融合した時の起動パスワードを知らんねん」
「融合?」

「女のエス一人おっても、爆発物にはならん。エスの脳内に依栖のメモリーカードを挿入、それから更にそのメモリーカードを依栖に戻す。その際にパスワードが要求されんねん。それを知っとるんは、お前だけや。しやけど残念やったわ。お前はその上を考えとった。Kや」

圭はKを見た。笑っている。

「圭、お前は人造の体に憧れていた。依栖と一緒になりたかったんだ。俺のメモリーカードにその記憶が蓄積されている。年齢が増えていくのが嫌だったんだろうな」
フラッシュバック。圭の脳内で白い閃光が何度も煌く。圭は腕を伸ばした。
「その先、もぉ言わんでええ。思い出してきた。思い出してきたぞ。そうや。俺はKを作ってん。永遠の16歳のボディやんな。そや。そうや」

また、白い閃光。

「チカ兄、俺はあんたにそそのかされて、エスを起爆物に改変した。その頃もうエスの海賊版は出回っとったからな。どこにでも紛れ込ませて爆破させる用意が出来た。しやけど俺が『はじまり』を裏切った。そやろ」
「そうですわな」

近が無表情で答える。少女エスが震えている。

「俺は依栖とおられるんやったらどうでもよかってん。メモリーが入っとったんは『兄貴』の依栖だけやったからな。しやけど依栖が『妹』も連れてく、ゆうたんや。そやな、エス」

少女が頷く。

「その頃丁度人造たちのクーデターが起きた。俺と依栖が『終わり』に加わったんじゃ。俺は俺の代わりにKを『終わり』に置いた。そうやったな、K」

Kが頷く。

「『4人』で『はじまり』を裏切ったんや」

圭は九十四式の銃口を近に向けた。

「手、離してくれませんか。俺の兄貴と妹や」

「そうはいかん。俺は人造共を破壊せなあかんねん。上からそう言われとる。依栖とエスは俺の最終兵器や。一度はお前にぶち壊された思たけど、セーフやったな。お前が射撃下手で良かったわ」
「ホンマは研究員やもんな。そら下手やろ」

トリガーに指をかける。
撃てるか。
近の傍にはエスと依栖がいる。
勇気が無い。

怖い。

バス、と音がした。

K。

圭の後から、Kが九十四式の弾を放った。
だがそれは威嚇でしか無かった様だ。
近を掠りもせずに遠くの木々に当った。
圭の脳裏に白い閃光。

「チカ兄、も一個、チカ兄が知らん事教えたるわ」

近が眉を寄せる。



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