-26-


「俺が十代に見えるのは、お前がそう設計したからだ」
「設計?」
「お前は人造を作るのが巧かった。自分自身が『兄』の『依栖』よりも老けていくのを避ける為に、自分自身を人造にするつもりで」

Kは自分の胸を軽く叩いた。

「俺を作った。俺は、お前の器だ」
圭の孤独感から作られた物。それが依栖。そんなにまで身勝手に作られたものなのか。
「人造なんて、人間が身勝手に作った物だ。だから人造たちは反乱を起こした。それが『はじまり』と『終わり』だ」

圭は唇をぎゅっと噛んだ。

「そんで人造の依栖が『はじまり』を裏切ったんかい」
「そんなに簡単な事ではないよ、圭」

Kは静かに答えた。廊下に二人の呼吸音だけが聞こえる。

「『妹』の方はどうなったと思う?」
「エスか。データ中身半壊でチカ兄に連れてかれたわ」
「そうじゃない。作られたエスはどうなった?」
「あの型も俺が作ったんやろ。セックス用に可愛がられとるタイプやんな」
「そう。それは海賊版だ。オリジナルのエスはその時も近兄さんの手に渡ったんだよ」
「チカ兄か」
「兄さんは別の研究員に、エスを改造させたんだよ。」
「改造?」
「そう。改造だ」
「何してん」
「兵器化だ」
「兵器化?」

Kは依栖を見た。
圭も見た。
依栖は無表情で前を見つめている。

「少女体のエスは『はじまり』のリーサル・ウェポンだ。パスワードを入力すると起動する。人間風に言うなら自爆テロ」
「爆発するんかい」
「東京都内を焼き尽くすことが出来るよ」
「何でそんなんジブン知っとんの?」
「俺は、お前だよ、圭」

圭が自分自身で調べたのか。

「お前は近から離れることにした。オリジナルのエスと、兄の依栖、そしてメモリーの入っていない俺を連れてね。近の車をかっぱらって。だが車には仕掛けがあった。ブレーキを踏んでも止まらない。おかげで大事故さ。緊急時にはお前のメモリーのコピーが起動されるようになっていた俺はエスを掴んで脱出したが、お前の方はわからなかった。車は大破し炎上したからね。多分お前と依栖は近兄さんが救助したんだろうな。で、」

「で、記憶がごっちゃになってんねんな、俺」
「そういうことだ。お前の記憶の殆どは近兄さんが組んだ偽のプログラムだ」
「ほななんで?ほなどうしてチカ兄は俺を全部人造にせぇへんかってん」
「まだお前には遣り残したことがあるからさ。ね、近兄さん」

Kの言葉に圭は振り返った。

そこには近がいた。



←back← →next→


一覧へ


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -