-22-
その単語が圭の頭の中で点滅した。だが思考を遮断するように、ラボの階下で爆発音が響いた。
「なんや!」
近が立ち上がる。圭も焦る。
「チカ兄、拘束具解いてくれ!」
「あかん、ちょっと待っとれ。『終わり』の奴らが仕掛けて来よった。すぐ鎮圧したるわ」
「チカ兄!」
手を伸ばして引き止めようにも腕が伸びない。
近は部屋を出て行った。
圭が一人、部屋に残される。
不安になる。
また、階下で爆発音。
まさかラボを攻撃するとは。
更に小規模の爆発音。
このままでは死んでしまう。
体がいかに人造であろうとも、壊れてしまえば死んだも同然なのだ。
メモリーカードが半壊した依栖は、もう死んだに等しい。
スーツケースまで廃棄されてしまったとなると。
「…もう一遍作り直す事できるやろか…」
自分がラボの研究員だと、近は言っていた。
それが事実なら、この曖昧な記憶を辿っていけば、必ず依栖を最初の状態に戻す事が出来るだろう。
しかし、何故自分はあれほど躍起になって依栖を本体に戻そうとしていたのだろうか。
判らない。
自分の行動にさえ自信が持てない。
「圭さん!」
薄暗闇の中で声がした。
この声は。
「八代!」
八代と林田が部屋に飛び込んできた。
「お前らどないしてん、拘束具は?」
「『終わり』の仲間が来ました。僕らは脱出します。圭さんは」
「お前ら、なんで」
「圭さんは、今は敵だけどカリスマだから」
林田が笑った。
どうする。
近を待つか。
だがこの体勢のままでは不安だ。
林田が言った。
「圭さん、スーツケースならここにあります」
「ホンマか!」
飛び起きようとしたがままならなかった。
それを見て八代がナイフを出す。
←back← →next→
一覧へ