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-21-
目が覚めた時、最初に見えたのは薄暗い白い天井だった。
ラボだ。
夜になっている。
まだ自分はラボの中にいるのだ、と判った。
寝かされているのは何故だろう。
ここはどの部屋だ?顔が痒い。
掻こうとして、両腕が動かない事に気が付く。
拘束具。
両脚も動かない。
顔だけが自由に動く。
ゆっくりと顔を壁側に向ける。
近が座っていた。
「ご機嫌いかが」
「いかがも何も…何しはったんです、俺に」
「お前、ホンマにポンコツやってんな。自分の左耳にスロットあんの気付けへんかったんか」
「スロット?」
依栖本体にはスロットがある。
それは依栖の心とも言えるメモリーカードを入れる場所だ。
それが、自分にも?
「チカ兄、もしかせんでも、俺、俺は」
「お前は人造や。人間ちゃう」
脳に直接振動が来た。
「ほぉか。俺、勘違いしとったんやな。人造かいな」
ショックはあるが、それは大した物でもなかった。
気付かなかっただけだ。
だが何故気付かなかった?
本来人造ならば自分が人造である自覚を持っている。
近が言う。
「お前が兄貴やゆうてる依栖にメモカが必要やゆうて、自分で気付けへんのがおかしんじゃ。何で、わからんかってん」
「わかりません。なんでやろ…記憶がごっちゃになっとる」
「事故の所為やな」
「チカ兄、事故ってなんですのん」
「それも忘れてんねんな。お前は、今は人造の体や。しやけどその前はちゃんと人間やってんで」
「…にんげん」
「そや。お前は『はじまり』の研究員、このラボの職員やってん。今は、なんやしらんけど「捕獲担当」の記憶があんねみたいやけどな。ラボで人造の研究しとった。覚えてへんか」
「覚えてません」
「そうか。お前、天涯孤独やってん。俺が『はじまり』に連れて来た時はまだ5歳やったな。俺が大阪ラボの研究員にしたったんじゃ。そこで人造の研究させて…ほっといたら、お前は『依栖』と『エス』を作っとった」
依栖。
「依栖もエスも元はジブンが作ってんで。兄貴と妹が欲しいゆうて。いつの間にか出来とったわ。依栖の方はお前によぉ似させて。笑ってもぉた。依栖はお前のええ兄貴になったみたいやけど、エスの方は海賊版が出回って結局普及したんは愛玩用になってもうたな」
「…依栖」
「そや、依栖や」
「チカ兄、スーツケースは?」
圭が訊ねると、近は眉を寄せた。
「スーツケースは、廃棄した」
圭は飛び起きようとしたが、拘束具がそれを許さなかった。
ベッドが軋む。
「なんでや、なんでや!」
「あんなモンがあるからお前は迷んねん」
「迷ってなんかおらへん」
「迷っとる。事故の記憶も曖昧やろ」
「しやから、事故ってなんやねん!」
「お前は人造の兵器を作っとったんじゃ」
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