この年齢になって格好をつける事もないだろう。
ないんだろうが。
やはり、恥ずかしい。

「キャッツアイみたいですよねー、僕達!」

キャッキャとはしゃぐ菅野は恥ずかしくないのだろうか。

紳士肌着の会。

メンズインナー、メンズスパッツと呼べば格好もつくのか。
それでも着ている物は、年齢を感じさせる保温下着だ。

性格が出ていると思う。
菅野は上下共に濃い目のグレー。
杉浦は真っ白で揃えていた。

「腹巻もしたい所なんですけどねー。さすがに杉浦さんとのえっちはじめに腹巻はないですもんねぇ」
「あれねー。お腹あったかいよね」
「二十代の時は考えられなかったですけどねぇ、こんなの着るの」
「菅野くんだってつい最近だろ、着だしたの」
「三十なってからです。嫁に言われて。屈辱的でしたよ」
「あとコレね」

風呂の前で脱ぎながらの会話。
杉浦が自分で指し示したのは、五本指の靴下。
アハハ、と上半身裸の菅野が声を上げて笑う。

「スッキリして気持ち良いんですよね五本指」
「女子高生も履くって言うじゃないか」
「あれはもっとカラフルなんですよ。僕らオッサンのとは違うんですって」

そこで二人とも全裸になった。
外は雪が吹き込んで冷えていた。
久しぶりの、INデートホテル。

菅野が風呂のドアを開ける。
モクモクと湯気。
背の高い杉浦はまともにそれを食らう。

「あー。やっぱいいですねぇ日中の風呂は…」
「贅沢だよね」

今日は一月三日。
元旦から初売りで、年末から数えると2週間は休みを取っていない。

だが、「休憩」はこうしてコンスタントに入れられた。
菅野に。

休まないとね、ダメですよ。

そう微笑まれて、騙されて。
そうして菅野を抱いて。

二時間ほどで部屋を出て、店舗に戻る。

二日、原田店で辺見に言われた。
「いい匂いしますぅー。お風呂上りみたいですぅ」

そう声を掛けられた菅野はにこにこ笑って、平気で嘘をついていた。
「バスシリーズって言う香水を妻に貰いまして」
「杉浦さんも同じ匂いしますぅ」
「おすそ分けしたんですよ」
「いい匂いですね杉浦さん」

辺見に微笑まれて、たじろいだ。
そんな事も昨日、あった。

思い出して苦笑する。
信じただろうか、辺見は。
秋田一の天然丸出しヘルパー。
そこに秋田エリア唯一のオカマの竹中がいなくて良かった。
何をどうからかわれるか。
考えるだけで恐ろしい。

熱そうな湯に菅野がドボンと入る。
杉浦はその後に続いてバスルームに入り、シャワー台の前に座る。
体を軽く洗う。
バスタブの中から菅野がじっと杉浦を見つめている。

「なんだい」
尋ねてみる。
菅野はニヤニヤと笑う。

「なんとかはじめですね」
「ヒメハジメ」
「奥さんとしました?」
「レスだからねぇうちは。関係ないよ」
「うちもまだです。だから、今年最初は杉浦さんです、僕」

菅野の顔を見る。ニタニタと笑っている。

今年も菅野に振り回されるんだろう。
きっと来年も。
再来年も。

菅野が思い出した様に笑う。
「なんだい」
「コットン本来の風合いを生かし、ふっくらとやわらか。ストレスフリーのメンズインナー!杉浦さんに紳士肌着が良く似合う件について」
「胸囲の所為だよ」
「いい体してますもんねぇ」
「ちょっと腹出てきた」
「そんな事ないですよ」

バスタブから、菅野が腕を伸ばして、杉浦の腹を撫でた。
電撃の様な物が杉浦の背筋を伸ばして、今年最初の快感を与えた。


20100101元旦 完



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