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「三人組の方はどな奴らや」

これには八代が答える。

「仲川、宮司、森木です。知ってますか」
「もっかい顔見たら判るかもしれへん」
「圭さんの事凄く怖がってますからね。行ったら泣きますよあの三人」

妙に受けて、笑ってしまう。

「そうか、怖がって泣くんか。おもろいな」

圭は手持ち無沙汰になって、八代の足の裏をくすぐった。
八代がまた体を捩る。

「やめてくださいよ圭さん」
「あんな、ジブンら、なんで?」
「なんでって、なんです?」

林田が訊ねる。

圭は八代をくすぐるのをやめて、林田の方を向いた。

「なんで、ジブンら、『はじまり』を裏切ったん?」

小鳥の声が聞こえた。ピチュピチュと鳴いて、飛び立つ音が聞こえた。

「圭さん、事故の事は覚えてますか?」
「やめろ、八代」
「おい、なんやねん。事故って」

事故。
あの時、近も言った。
事故。
圭には事故の覚えはない。

「事故ってなんやねん。近兄もゆいよった。何の話やねん。全然わからへん」

圭は不安になった。
二人を交互に見る。
八代が言う。

「俺らも、事故に関する記憶は落とされているんです。すみません」
「落とされてる?何が?何で?誰に?」
「それは」
「それ以上はゆうたらあかんで」

ゆったりとした間延びした声。
圭が振り返り扉の方を見ると、近がそこにいた。
派手な柄の和服に裸足。
手にはデリンジャー。
小さな小さな銃。

「そっから先は緘口令が敷かれてんねん。知っとるやろ?人造コンビよ」
「緘口令て…何ですのん、事故って、なんですのん、チカ兄!それにこの二人も…人造やて?」
「お前はなんも知らんでええねん。オイコラ八代、林田。ジブンら、もぉ『はじまり』のモンや。人質でもなんでもないねん。もぉこっちの同志やねん。ただの人造が。判っとるやろ?ほな圭のことは大事にせなあかん事も判るやろが」
「どうゆう意味ですか!全然判らへん。チカ兄」
「大声出すな。ラボやぞ。俺があのクソコピーの所為でどんだけ血流した思てんねん」
「すんません」

圭は判らず謝ってしまう。
なまじKが同じ顔をしているものだから、自分にシフトしてしまうのだ。
林田が言った。

「緘口令も何も、俺たちは『そのこと』については語れないようになってます。人造だから勝手なことはできないんですよ。安心してください」
「しやったな」

近はデリンジャーを懐にしまった。
圭だけが何も判っていない。

「なんも、わかりません。わかりませんわ、チカ兄」
「わからんでええねん。お前は。それよりエスの方見たれや。元に戻せるかどうかはわからへんけどな」



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