白い丸薬みたいな清涼系のお菓子。
その粒が階段の一番下の段に、まずは一粒。
誰かが落としてしまったんだろうな、と梶花は思って、捨てる為に拾う。
視線をずらすと、また一粒。
階段の四段目。
拾う。
また見つける。
拾う。
繰り返して梶花は階段を上がって行く。
売り場の階段では無く、倉庫側の従業員用階段。
3階の男性用トイレ前まで白い丸薬の様な物は離れては落ちていた。
梶花が最後の一個を拾うと、トイレのドアが開いて、そこに梁ガクトがいた。
梁は小さいが明瞭な声で
「やっぱり花は拾うよな」
と、笑った。
梶花はムッとして唇を尖らせる。
「ゴミだよ。拾うだろ」
梁がニコニコと笑う。
ガクトの響きとは裏腹に、見た目はあの眼鏡の韓流スターにも似た趣きで、ソフトな笑顔に外国人留学生がデジカメコーナーから後を絶たない。
井川サスケとはまた違うタイプの「いい男」。
梁ガクトも、梶花を可愛いと感じる男の一人だ。
「梁、サボりすぎだぞ。売り場戻れよ。今日デジカメ俺と梁しかいないんだからな」
梶花に言われ、梁は後ろ頭を掻く。
「平日に売る自信ないもん、俺」
「それでも売り場に出てろって…店長がうるさいだろ。あ、ほら無線来た…はい、トイレです、今すぐ戻ります。梁は見てません」
適当に繕い、売り場方向へ踵を返す。
梁は梶花の後ろ姿を微笑ましく眺める。
花はぬいぐるみみたいだよなー。
トイレのドアを後ろ手に閉め、ポケットから清涼系の丸薬みたいなお菓子を取り出し、二粒、口に入れた。
いつか花に口移ししてみたいな、と思いながら。
20090524完