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エス達はラボに運ばれた。
Kに誤算があった。
エスのメモリーカードは壊れていなかったのだ。
エスはまだ生きている。
だが起動に問題があるらしく、エスは「生かされている」だけで動作に支障があった。
ずっと、ずっと眠り続けている。

隣の部屋は近が入っていた。
こちらも重症ではあったが、かろうじて近も生きている。
しかし近もまた、眠り続けているだけだ。
呼吸する音と心電図の機械音だけが部屋に響く。

二人の「生きている死体」を見るのが嫌で、圭は捕獲した元同志達の部屋を訪ねる事にした。

二人部屋と三人部屋に分かれて寝かされているそうだ。 

白い壁。
面積の広い窓からは春の光がこぼれてくる。
消毒液の匂い。
真新しいラボに、圭の黒いロングコート姿は異様でさえあった。
圭はスーツケースを転がしながら、知った名前が書かれている二人部屋に入った。

「どないや」

入るなり、圭は朗らかに元同志に声をかけた。

ベッドに寝かせられている二人は、それぞれ拘束具を付けられていた。
腕を胸の前でクロスさせられ、足も繋がれている。

柔らかなウェーブの入った髪に、眉毛の無い少年。
その隣のベッドには七三にメガネの少年がいる。
知った顔だ。
眉毛が無いのは八代、メガネは林田。
もう一度、圭は八代の方に向けて声をかける。

「どないやねん具合は」

八代ではなく、林田が答えた。

「拘束具が苦しいです。それ以外は」

まずまずですね、という言葉を曖昧な表情で答えた。
圭はスーツケースを壁に立てかけ、近くにあったパイプ椅子を引いて二つのベッドの間に座る。
部屋の中は暖かい。
暑くなってコートを脱ぐ。
脱いだ物はバサリ、と八代の上に掛ける。
八代が嫌そうに体を捩る。


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