-15-


真っ直ぐに。
真っ直ぐに、弾丸は。二発。

Kを守るように体を広げた、少女エスの額と胸を撃ちぬいた。

「エス!」

二人のケイが叫んだ。
周囲の喧騒が認識できた。
煩い。
周りが煩い。
東京市民達が蠢いている。

エスが真横に倒れる。
真っ白のレースと黒いフリルのミニドレスがふわりと風に舞う。

先に動いたのはKだった。
倒れたエスの肩を抱き、号泣する。
圭は嫉妬した。

そこで泣くのは自分のはずだ。
お前が泣くとこちゃう。
俺や。
俺の役目や。
近寄ろうとするが、足が竦んで動かない。
怖い。

エスが。

エスが壊れた?

「エス!」
「近寄るな!」 

Kが二箇所から血を流すエスを抱き締め、圭の動きを止める。
それが呪文の様にも聞こえて、圭は身動きが取れない。
東京市民と「はじまり」同志達は既に完全に避難を終えたようだ。
風が吹く。
土埃が舞う。

そこには、倒れた近、倒れたエス、棒立ちの依栖、そして二人のケイ。

Kの泣く声だけが響く。

「お前が、お前が、エスを壊した。お前が!圭、お前が!」

Kが圭を睨む。サングラスの下から、圭を睨む。
痛い。
視線が痛い。
当るとは思っていなかった。
自分の腕で、エスを壊す事になるとは思わなかった。
思っていなかったのだ。

Kが立ち上がった。

「もう、エスは使えない。壊れてしまった。お前の所為だ。依栖にも、もう用は無い」
「…どないする気やねん」
「こんな、空の体は、もう俺たちに必要ない」

今まで抱いていた少女エスの体を、Kはいとも簡単に圭に向けて投げ捨てた。
圭の体が呪文が解けたように跳ねて動く。

「エス!」
「もうそれは動かない。駄目だ。お前を殺しても、エスは喜ばない。もう、終わりだ」

Kはスーツの胸ポケットから何かを出した。
見覚えのある物。催涙弾。

「またその手か!」
圭が言うと同時にそれはKの手から放たれた。
白い煙幕。
腕に抱いたエスの顔を守るようにして、立ち上る煙から身を守る。
瞼を閉じても涙が出る。
鼻腔を攻撃される。
煙幕が消え去った時、Kの姿も消えていた。

残されたのは、圭。
依栖。
血を流した近。
撃たれ倒れる「終わり」のメンバー達。

風が吹いた。


←back← →next→

一覧へ


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -