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「…なんで、あっちに俺のコピーがおるんですか」
「そらお前を取り込みたいねんやろ。お前と依栖を『終わり』本部に置いて、あっちに取り込まれた若い同志の教育させる気ちゃうん?あっちに行ってもうた奴らの中には圭をカリスマみたいに思てる奴もおんねしな」
「カリスマ?」
「『はじまり』の若手カリスマ・圭、てゆわれてるらしな、ジブン。『はじまり』の設立に携わった悪魔みたいな少年、やることなすこと血塗れの圭と依栖」
圭は苦笑した。なんやそれ。射撃の腕も下手なのに、その言われよう。買被りすぎだ。
「実際、『終わり』に取り込まれた奴ら、20人から取り返しとるやん。カリスマやな」
「そんなんカリスマなんて言いませんて」
「そやな。お前は仕事が遅い。エス取り戻すんに躍起になっとる。俺らはもうエスは見切ってんねん。お前だけでなんとかなるやろ」
「なりません」
「兄弟やなぁ」
「そうです、兄弟や。離れられへん。絶対取り返す」
「判った判った。判ったけども、お前の仕事はなんや」
「同志を取り戻す事です」
「そうですわなぁ。暫く依栖の事は忘れぇ。な。圭」
 
圭はそれには答えず、窓の外を見た。

「はじまり」が近に取ったホテルは白を基調にした豪華な部屋だった。
広い。窓も大きい。
その外を見る。
いい天気だ。春の風が吹いているのだろう。
東京市民達は今も喜びの歌を叫んでいるのだろう。
エスに逃げられ、Kという自分のコピーと出会ってから二日経った。
あれからずっと近に説教されている。

説得だろうか。
エスの事で頭が一杯になっている自分を近は冷静になれと諌める。
近は煙草をもみ消した。
そっぽを向いている圭に言う

「ほな仕事や。仕事に集中したらええ」

圭は手元のスーツケースを見た。
やはりエスが気にかかる。
何故エスはあちら側にいるのだろう。
理解できない。
あんなにも激しく「はじまり」を応援していた依栖。

依栖が「はじまり」に誘ったのだ。仲の良い兄弟だった。

近が二本目の煙草に火をつける。

「今日、東京D区に『終わり』が攻撃をしかけるらしねん。昨日の晩、情報が入った。今、『はじまり』の同志がD区の前線に集まっとる。そこをあいつらが攻撃し…」 
「テロや」
「テロやな。鎮圧は俺と東京C区D区の同志がすんねん。で、お前の出番や」
「手当たり次第、知った顔捕獲をしたらええんですか」
「せや。頼むで、カリスマ」
「カリスマちゃいます」


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