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新時代は「はじまり」が「終わり」に勝利した事からやってきたのだ。

「はじまり」も「終わり」も、それは政党の呼び名でしかない。
本来の名は別にある。大阪の一部市民が「はじまり」を起こし、東京を席巻し、今がある。
だが「終わり」は「はじまり」の若い同志を次々と取り込んでいった。
「始まり」ではトップに辿り着けないと判断した若い同志達が、「終わり」に取り込まれていくのだ。

「ソイツらを説得して奪還すんのが、お前の仕事やろがい」

都内のホテルの一室で近は煙草の煙を吐いた。
圭の顔に白い気体がかかる。
ゴホ、と喉を鳴らす。
真ん中のテーブルを挟んで、圭と近の二人が対面している。
近が灰を撒き散らす。
その後を追うように、圭はテーブルの上をウェットタオルで拭いていく。
几帳面さが自然と出てしまう。

確かにそうだ。
近の言う通りだ。

圭の仕事は、「終わり」に取り込まれた「はじまり」のメンバーを連れ帰る事なのだ。
エスと依栖の融合を望んでいるのは、圭ただ一人。
それは「はじまり」には無関係な事だ。

しかし、この仕事は元々兄弟の物だった。
圭はまだ若い。
高校を中退して、先に「はじまり」の雑用をしていた依栖に呼ばれ、東京に出てきた。
「はじまり」を支える同志。

だが、自分を誘った依栖が、「はじまり」を裏切った。
その件の決着は自分の使命だと、圭は思っている。
優先事項は「同志の回収」。
その中に依栖のメモリーカードの回収があるのは仕方が無い、と思っている。
職権乱用、公私混同。

だが、仕方ない。
仕方ないのだ。
兄弟だから。

近がもう一度、圭の顔向けて煙を吐いた。
顔をしかめながら圭は質問する。

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