「あ、オカマだってわかりますぅ?わかっちゃいますよねー!
自分、タケナカって言います、よろしくです。
えーとぉ、お客様今お使いの携帯電話ってどちら?ああ、マストさんとQoQoさんの両刀遣い?
あー、タケナカは違いまーす、男性が好きですよん。お客様みたいな背の高い上品そうな人、好み。
あらごめんなさいそんな顔しないでぇ。
でね、メインはどっち?ああ、マストさんの方。ですよねー。
原田市はマスト天国ですもんね、持ってるといいですよね。
でもねぇ、通信料とか通話料考えると、2台目にはエルデータにすると必ず得します。
これホント!
マストとエルデータ、もしくはQoQoとエルデータ。
この組み合わせが最強なの。
MNPってご存知?
そうそう、番号そのまま乗り換えてって奴です。
アドレスは変わっちゃいますけどね、それだって問題無いわ、今ってアドレス変わっても一斉送信でお知らせ出来るし。番号そのままって言うのはいいと思うの。
第一ね、今エルデータにするととってもイイコトばかりなの。今ならなーんと基本使用料が…」

まくし立てる竹中を、杉浦が制した。
右の掌を竹中に向けて、「ストップ」の意味。

見ていた菅野と辺見が吹き出す寸前になって耐えている。
杉浦はため息を漏らす。
「タケちゃん…いつもそんな接客なの?」
竹中は白い歯を見せてニッタリ笑う。
「そうよ?どうかしましたあ?」
「あんまりフレンドリー過ぎないかな、それは」
「そお?これでも大分抑えたつもりよぉ?ねぇ辺見ちゃん」
ふられた辺見が頷く。

「竹中くんは普段はもっと凄いですぅ。全然関係無いのにいきなりお客様に、ラフスのタテカン前に連れてって、誰が一番好きかアンケート取ってますぅ」
それを聞いた菅野がたまらず吹き出す。

「た、竹中さんの接客って…楽しすぎますね」
「楽しいのがいいじゃない。難しい顔して売ったって、買ってくれないわよ」
「タケちゃんが楽しんでるだけじゃないか」
杉浦は眉を寄せる。

「そうよ?いいじゃない。タケが楽しまないと伝わらないわ、エルデータの良さが!」
それには菅野も同意する。
「いいこと言いますね。確かにそうです。仕事は楽しまないと損します。自分が仕事好きじゃないとね、他に伝わらない」
「でしょ?さすがカンカンだわ、わかってるわぁ」
「でもねぇ、それにしたって仲良し過ぎるよ。お客様は友達じゃないんだよ。親しすぎて嫌がる人もいるだろ」
杉浦がそう反論すると、辺見がニコニコ笑って答えた。

「竹中くんでヤバイと思ったら私がフォローに入りますぅ。大丈夫ですぅ」
「辺見さんが常識人で良かった!」
「何よカンカン、それどういう意味?」
三人でケタケタと笑っている。

杉浦は真面目にロープレを行いたかっただけなのだ。
各店舗のスタッフが、どんな接客を行っているのか見たかっただけなのだ。
なのにこんな。

菅野まで一緒になって。
脱力感に苛まれる。

どうせ僕は現場に立った事がありませんよ。
ずっとデスクワークですよ。
現場知ってる菅野くんには敵いませんよ。

いじけてしまう。

売り場でケタケタと笑う三人を尻目に、杉浦は肩を落として一人、喫煙所に向かった。


20090917完


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