杉浦は随分前から不思議に思っていた事を菅野に尋ねた。

「菅野くんて、ちっちゃい時はどんな子供だったの」

二人で、ホテルのソファーでテレビを見ながら。
杉浦は菅野の膝に頭を乗せて。
菅野はテレビを見ながら、手は杉浦の頭を撫でて。

「どんな…って、まあ普通の子供でしたよ。元気でした。病気知らずで。小学4年生位までは、身長は後ろから数えた方が早かったです」
「あ、それ僕と逆だ。僕は中学に入るまで前の方だったよ。急に伸びて関節痛かった」
「その経験が僕にはないなー」
「そっかー。昔っからお喋りなの」
「ええ、そうですね…うん、お喋りです」
「どうしてそんなにお喋りなの」
「どうしてですかねー…弱みかな」
「弱み?」
「自分を隠したいから、お喋りなんです」
「そっかー」

杉浦は目を閉じた。
菅野の、自分の髪を撫でる手が心地好くて。
考える。

隠したいからお喋りなのか。

セックスしてる時に静かになるのは、隠してないからなのかな。

静かに息を吐き、切ない小さな声を出す、あれが菅野の本来なのか。

どっちでもいいけれど。
どんな菅野も、菅野だけれど。

「菅野くんはお利口さん」
「ええ、僕はお利口さんなんです」
「今日はいつもよりお喋りじゃないね」
「ええ、最近の僕は地が出てます、杉浦さんの前で」
「大人しい方が地なんだね」
「こう見えて、黙ってろって言われたらいつまでも黙ってられるんですよ」
「他の皆は信じないだろうねーそんな菅野くん」
「他なんてどうでもいいんです。杉浦さんが僕の事知ってるんだからそれでいい」
「排他的すぎるよ」
「でも本当に、僕にとっては他はどうでもいいんです」
「そうなんだ」
「そうですよ」

そんな会話をしながら、菅野はずっと笑顔だった。

杉浦は菅野の笑う顔が好きだ。
自分には出来ない笑い方。
顔の筋肉が発達した笑顔。

その努力した笑顔が、健気に思えて、好きだ。


20090814完


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