菅野のメールの、絵文字の多用は余り気にならなかった。
気にはならないが、どうしたものか、とは思ってしまう。
携帯電話を売る企業に勤めているせいだろうか。


菅野に限らず、社員はいい年齢の男達でも、平気で絵文字を使う。確かに杉浦も、少なからず使う。
!や?の絵文字程度ではあるが。

しかし菅野は様々な絵文字を数多く使う。

例えばこうだ。


「秋田の皆さん
週末がはじまりました
バンバン売って行きましょう
今週末はL端末を売っていかないと、僕の指が在庫の数だけ平塚課長に飛ばされます僕の指の為に皆さん
かんの

杉浦はこんな菅野のメールを読む度に一人、液晶に向かってつっこむ。

君は女子高生か。
ご丁寧に、自分の顔のアイコンまで作って。
これがまたそっくりで、何故か腹が立ってくる。

そして今。
こんなメールが届いた。

秋田に行きます
 も含めて行くのでしましょうね
早くサマに会いたいな

呆れてしまう。
なんなんだ菅野くん。
どんな脳みそしてるんだ。

「ニヤニヤしてて気持ち悪いわ、スギサマ…」
「え?」
竹中の声で正気に戻った。
原田店だ。
巡回に来ていた。
菅野のメールだけで、一瞬別の世界に飛んでしまっていた。
竹中が難しい顔をしている。

「気持ち悪いわぁスギサマってば…なんなの、誰のメールですか。どうせカンカンでしょうケド」
「う、ううん、違うよ何言ってんのタケちゃん」
「うろたえすぎよスギサマってば。なぁに?カンカンの巡店でもあんの?」
「ん、来週秋田回るらしいね…平塚課長と一緒だと思うよ」
「あら、いいわね平塚課長!好きなタイプよぉー!」

あれ?タケちゃん、僕のファンじゃなかったかい。
ちょっとだけ嫉妬してしまうのは、相手が平塚だからだろうか。
菅野と共にいられる平塚が羨ましい。

それでも、あんなピンク色の絵文字メールが貰えるのは自分だけだろうとは思う。


20090830完


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