菅野のメールの、絵文字の多用は余り気にならなかった。
気にはならないが、どうしたものか、とは思ってしまう。
携帯電話を売る企業に勤めているせいだろうか。
菅野に限らず、社員はいい年齢の男達でも、平気で絵文字を使う。確かに杉浦も、少なからず使う。
!や?の絵文字程度ではあるが。
しかし菅野は様々な絵文字を数多く使う。
例えばこうだ。
「秋田の皆さん![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/200908302139021.gif)
週末がはじまりました![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/200908302139022.gif)
バン
バン
売って行きましょう![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/200908302139024.gif)
![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/200908302139025.gif)
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今週末はL端末を売っていかないと、僕の指が在庫の数だけ平塚課長に飛ばされます
僕の指の為に皆さん![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/200908302139027.GIF)
かんの
」
杉浦はこんな菅野のメールを読む度に一人、液晶に向かってつっこむ。
君は女子高生か。
ご丁寧に、自分の顔のアイコンまで作って。
これがまたそっくりで、何故か腹が立ってくる。
そして今。
こんなメールが届いた。
「
秋田に行きます
も含めて行くので
しましょうね![](//static.nanos.jp/upload/m/mujiknh/mtr/0/0/2009083021390213.gif)
早く
サマに会いたいな
」
呆れてしまう。
なんなんだ菅野くん。
どんな脳みそしてるんだ。
「ニヤニヤしてて気持ち悪いわ、スギサマ…」
「え?」
竹中の声で正気に戻った。
原田店だ。
巡回に来ていた。
菅野のメールだけで、一瞬別の世界に飛んでしまっていた。
竹中が難しい顔をしている。
「気持ち悪いわぁスギサマってば…なんなの、誰のメールですか。どうせカンカンでしょうケド」
「う、ううん、違うよ何言ってんのタケちゃん」
「うろたえすぎよスギサマってば。なぁに?カンカンの巡店でもあんの?」
「ん、来週秋田回るらしいね…平塚課長と一緒だと思うよ」
「あら、いいわね平塚課長!好きなタイプよぉー!」
あれ?タケちゃん、僕のファンじゃなかったかい。
ちょっとだけ嫉妬してしまうのは、相手が平塚だからだろうか。
菅野と共にいられる平塚が羨ましい。
それでも、あんなピンク色の絵文字メールが貰えるのは自分だけだろうとは思う。
20090830完