唸った。
呻いた。
感嘆。
思わず拍手。


「ヒデキ!ヒデキ綺麗だカッコイイ!」
「うるせぇ!やめろミナト黙ってろ!」
怒鳴るヒデキの顔は真っ赤だ。
照れてるとかじゃない、フツーに怒ってる。

グラビアの撮影。

グラビアって言うのかな。
ゲイサイトの写真。
うちの店の広告。

俺とヒデキ一人ずつ写真撮影。

ヒデキは裸で怒ってる。ベッドの上で。

俺の撮影は終わってしまって、今はヒデキが悪戦苦闘してる。

ヒデキはゲイじゃないし、デリボーイでも無い。
金の為に、店に在籍してるデリボーイと偽って写真だけ撮らせてる。
言わばサクラ、かな。

ヒデキが撮影するのはこれで2度目。

市内のラブホテルの一室で、プロのカメラマン雇って。
結構本格的。

カメラマンの金田さんがファインダーを覗きながらヒデキに声を掛ける。

「でもホントにヒデキくんは綺麗だよ、特に体が。もうちょっと太ってもいいけどね」
「だよねー。顔も綺麗だけどボカシで消えちゃうから勿体ないよな」
「勿体なくねーよ。冗談じゃねー。バレたら嫁に顔向け出来ねーよ」

必死のヒデキに俺と金田さんは笑ってしまった。

「んじゃヒデキくん、次体起こしてー。仰向け。そうそう。右手チンコに添えて。左どうすっかなー。ああ、それいいね。ヒデキくんモデルの才能あるよー!カンいいよー!目線左よろしくー」
褒めて褒めて。
金田さんの褒めっぷりは気持ち良くて、撮られる側は楽しくなる。
ヒデキは緊張してるけど。
顔、笑ってない。

ヒデキはホントに顔はいいけど愛想無いから、もしマジでドライバー辞めてデリやったとしても、きっと売れないと思う。

大きい目が可愛くて、俺は大好きなんだけどな。

ヒデキがブツブツ文句言ってる。

「金がねーって情けねーよ…クソ、こんな仕事」
「こんな仕事でも仕事です。真面目にやれよヒデキ」
「わかってるよ!」
「ミナトと絡めるならもっと給料弾むって社長が言ってたよ?」
「絡みは無理」
「えー。ヒデキ、ちょっとキスくらいしてみよーぜー」
「無理。キスとかそういうの大事にしてるから。嫁以外としない」

金田さんがポーズを変える指示を出す。
ヒデキは俯せになった。
何枚か撮られる。

「んじゃバイブ舐めてるアップとかならいいかな」
「そーゆーのも無理。パンツ脱がない単体写真だけって約束だから」
「ここまで撮らせてんだから後おんなじだと思うけどなー…ヒデキ、せめて勃起してるトコ撮らせてあげなよ」
「勃たねーって。無理だって。緊張してるし人見てる前でオナニーなんか出来ねーし、ましてミナトと金田さんだろ。男の前とかってもう無理」
「ヒデキくんは無理な事多いなー」
「だから就職出来ねんだよヒデキは」
俺がそう言うと、ヒデキは眉をひそめた。

「ミナト、昼の仕事、どうだ?」
「うん。面白い。でも秋田はやっぱエルデータ厳しいっぽい。マストばっか売れるー」
「エルデータの端末高いしな。市内外れたらエリア狭いし…でも通話料安いのが売りだろ」
「うん。そーゆー風に習って来た。後はーノリで売るだけー」
「ミナトが就職出来るのに俺が仕事見つけられないってのがおかしいよ」
「年齢のせいじゃね?俺若いし、愛想いーし!」
「30にもなると再就職厳しいんだぜマジで」
「俺はーその内ぃー、エルデータのぉー、正社員になるんだぁー目指すんだぁー」
「派遣でしょ?社員なれんの?そうだとしたらミナト、デリも辞めなきゃだな」
「うん!金田さんは携帯何使ってんの?」
「俺はマスト」
「俺からエルデータ買ってぇ」
「もうちょい儲かってから考えるよ」
金田さんにおねだりしてみたけど、通用しなかった。
んー。

「さて、ヒデキくん。風呂で何枚か撮ったら終わりにするよ」
「まだあんのかよ」
「なんせヒデキくんが指名率一位って言う」
「在籍してねーのに一位なんだぜ俺。サイトの画像だけ見て、人気No.1とかって意味わかんねんだけど」
「ホントのNo.1は俺だもん。一番稼いでるもん」
ニヤニヤ笑ってしまった。
ふて腐れるヒデキが可愛いな、って思って。

三人で風呂に向かう。

壁に両手ついて、半身だけ振り返るポーズを撮るヒデキ。それを金田さんが撮ってく。

俺はそれを眺めて、この前行った商品説明会で習った事を思い出してた。
画素数が大幅に増えたんですよーこの機種。
CCD搭載なのでやや重くて厚い端末ですがー。
有機ELディスプレイでとっても綺麗に画像が見られます!

今までの俺の生活に無関係な単語ばっかりで最初は意味わかんなかったけど、なんか自分が賢い子になったみたいで面白かった。
わかんない事あればヒデキに教えて貰おうって思ったし。
ヒデキの好きな物を俺は売ってる。
なんか、それだけで結構楽しいんだよな。

怒りながら写真撮られてるヒデキ見てるのも楽しいけど。

20090807完

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