顔を合わせてニヒヒと笑いあった。

「お疲れ様でーす」
と、菅野。
今日も今日とて部下に対しても腰が低い。
そう言うスタイル。

「お疲れ様でっすカンカン」
と、竹中。
上司に対しても礼儀が無い。
オカマのアスリートは細身のマッチョ。

二人でニタニタと笑い合う。

「もしかして同じ事考えてる?」
竹中が言うと、菅野は更にニタニタと笑う。
「同じですかねぇ?せーので言いますか?せーの」

「ラフス!!」

何故か隣に居た辺見ナオコも加わり、三人で国民的五人組アイドルのグループ名を口にした。

辺見もニコニコと笑う。
「アレ見た瞬間に、『今年の秋田エリアはコレだろうなぁぁ』って思いましたぁ」
「ね?!そうよね!?アレしか無いわよね!?カンカン、タケが振付指導やるわ、宮サマと岡部っちに連絡しといてね?」
「ですよねー。アレしか無いですよねー。もうね、僕はアレを見て以来杉浦さんを正視出来なくて」
「タケもですケド!スギサマはアキラちゃんの位置よね身長的に!」
「で、辺見マコトが菅野さんー。違和感無いですぅ」
「お、有り難い配役!でも正直僕あれなら踊れます自信ある」
「カンカンに自信無い物なんて無いでしょ!んじゃタケは桑原レイジくんやりたいわ!でー、宮サマは襟足長いからヒロミちゃんね。あら丁度いいわーセンターに岡部っち置いたら身長的にピッタリだもん、星野くん役決定!」
「決まりましたね!よし、秋田エリアが優勝イタダキだ!」
菅野が拳を熱く握り締めた。

「何の話ー」
遅れて杉浦がやってきた。
三人で杉浦の顔を見つめて、それからニヤニヤと笑う。
意味がわからず、杉浦は眉をひそめた。

原田店携帯電話コーナーにて。
菅野、竹中、辺見の話を聞いて、杉浦は珍しく小さな声で絶叫し、うろたえた。

「や、やだよ!僕は嫌だ!そこまでして優勝なんか欲しくないよ!」
ぶんぶんと音が聞こえそうな程首を横に振っている。
「でも優勝したらノベルティガッポリ貰えるんですよ?多分マイクロSDの山だと思うけど。秋田エリアの為にホラ、頑張りましょう杉浦さん!」
「だ、ダメダメ!無理無理!僕踊れないよ!?僕リズム感無いもん、僕もう39歳、無理無理」
「ラフスのメンバーとそんなに変わらないですよぅ。星野くんでも36になってるはずですぅ。杉浦さんだって踊れますぅ」
「何の為に体育の教員免許持ってるタケナカがいると思ってんのスギサマ。ウフフ、毎日でも秋田市行ったっていいわヨ、ビシバシしごいてアゲル!」
「頼りになるなぁ竹中さん!」

ニタニタと楽しそうな三人。
杉浦の顔色が悪くなる。

エルデータは五日前、国民的アイドルグループ・ラフスを起用した新CMを発表した。
その内容は、懐かしさのあるダンサブルな曲でラフスのメンバーが踊るだけと言うシンプルな物。
但しセットの豪華さもエキストラの数の膨大さも、これまでエルデータが発表してきたCMの中でも確実に巨額を投資したと思わせる物。




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