そして、夢の様な時間は終了する。

「…暑い!!暑いです、暑すぎるよ杉浦さん!」

いつもの菅野が戻って来た。
色気皆無の大きな明るい声。
まだ下半身は繋がったままなのに。
力を失いつつある杉浦のペニスが、まだ菅野の中にしまいこまれたままなのに。

「のぼせちゃいますねコレ」
「う、うん」

菅野が額をくっつけてきた。

「あのね、杉浦さん」
「う、うん」

叱られるのかと思って、目を閉じてしまった。

「くだらない事言いますね」
「う、うん…」

ドキドキする。
ダメ出しだろうか。

「このイルミ、うちで出してる商品に似たようなの、ありますよね」
ウヒヒ、と菅野の菅野らしい笑い方で。

杉浦の頭の中の小さな自分が、一枚の写真を示している。

ああ、あの機種の。

「あの機種のイルミにそっくりなんだもん。アレ、いい端末なのに、意外と売れなくて悩みますよね」
キュヒヒ、と、また変な笑い方をする。

急激にいつもの二人に戻ってしまい、杉浦は戸惑う。
戸惑いながら、菅野の腰をゆっくりと離す。
抜かれて、杉浦の物と思われる白い液体が浮かんできた。

「かんちゃん、ごめんね」
「なにがです?」
言いながら、菅野は杉浦に抱きついてきた。
「中に出した事ですか?」
「う、うん」
「こーゆーののノリって、僕は大切だと思うんですよねー」
「そう…かな…」
「そうですよ。これでいちいち杉浦さんが部屋まで戻ってゴム持って来てたら萎えますよ」
「せ、セーフティセックスって言葉をね」
「うん、勿論。でもホラ、僕は嬉しいですよ。生杉浦イタダキましたって感じで」

生杉浦。
なんだか嫌な響きだ。

ザブ、と湯船から菅野が立ち上がる。
手を差し伸べられる。
「シャワー浴びて、出ましょう。ホントに逆上せちゃいますよ。いい加減あったまったから、ビールが美味いですよー」

ニヤニヤと笑っている。

どっちの菅野が好きなんだろう。
杉浦は考える。

太陽の様に輝いて、何の翳りも見つけられない明るい菅野と。
仄かな小さな光の中で、小さな声しか上げられない菅野と。

どちらも同じ菅野だが。
どちらに惹かれているのか。

どっちも。

それが正解だ。知っている。

差し伸べられた手を握る。
立ち上がる。
眩暈を感じる。

菅野は笑った。ニヤニヤと、ケタケタと。

「あー、やっぱり逆上せちゃってる。冷たいシャワー浴びたら気持ちいいですよ、きっと」

そうかな。
そうなんだろうな。
かんちゃんの言う通りにしたらいいんだ。

菅野に手を引っ張られて、浴槽から出た。



20090725完

        




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