「…風呂、入るんじゃないの」
「入りますよ」
そう言いながら。
菅野の右手がまた、そっと杉浦の両脚の間に滑り込んで来た。

「ちょっと、かんちゃん」
「はい」
「かんちゃん」
「なんですか」
「…き、気持ちいいんだけど」
「そうですか、良かった」

摩られて。
擦られて。
菅野はじっと杉浦を見つめている。
視線を外さない。
杉浦の反応を確かめるように。

突然キスをされた。
唇が軽く当たっただけ。
手も、離される。

「先に風呂入ってまーす」
何も無かったかのように、菅野はソファから飛び降りた。
パタパタと足音を立て、風呂へ向かっていった。
残された杉浦は唖然とする。

いつも遊ばれる。
かんちゃんに遊ばれてばっかりだ。
ため息が出る。
杉浦も立ち上がった。
その場で着衣を脱ぐ。
シャツ。
ジーンズ。
靴下。
下着。

全部脱いでやった。
脱いだ物はソファの上に畳んで置いた。

全裸。
これくらいしないとかんちゃんに勝てない。
何をもって勝とうとしているのか自分でもわからなかったが、とりあえず脱げば負けないような気もした。

風呂へ向かうと、浴室は暗かった。
ドアを開ける。
泡の出る浴槽の中に、菅野が足を伸ばして入っていて、湯の中がイルミネーションで光っていた。

「ムード満点です」
「そうだね」
「杉浦さん、ちょっと引いてる?」
「うん、ちょっと」

杉浦の答えに、アハハ、と菅野は声を立てて笑った。

洗い場も広く、体の長い杉浦でも十分に使えた。
体を洗い流し、派手なバスタブに足を入れた。。
菅野の横に滑る様に入る。
菅野が飛びついてきた。

「危ないよかんちゃん」
「危なくないですよ」
杉浦の首に抱きつく。
首筋にキスされて、耳を舐められて、頬を啄ばまれ、唇に。

ゴボゴボと泡を立てるジェットバス。
薄暗がりの中の三色のイルミ。
抱き合って、口付けをしながら。
同時にお互いのペニスに手で触れる。
菅野も勃起していた。

切ない喘ぎ。
小さく振動する喉。
菅野の声にならない声。
全てジェットバスの音に掻き消される。
整然と配置された顔のパーツが、杉浦の手によって生み出される快感で歪む。
それさえも暗い照明で確認しづらい。
湯の中の虹色のイルミネーションに菅野の細い肢体が照らされる。




       

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