-7-

圭は小さく叫んだ。

「チカ兄、のいてくれはりますか。そいつ殺せへん」
「ジブンヘタレでビビリやなぁ。そな近距離で撃てへんのかいな。射撃はこないすんねん」

躊躇せず、近はトリガーを引いた。
圭は震えた。
銃弾は真っ直ぐにKの右目を貫いたのだ。
エスと繋いでいた手が解かれ、Kの体は後方に倒れた。
近が微笑む。

「心配せんでもええぞ圭。コイツなぁ」

近が言ったと同時にKの体が動いた。
動く?

「コイツ、人造や」
「え」
「しやから、ジブンのコピーや」

圭は返答できなかった。目を見開き、近とKとエスを何度も見比べる。

「コピーって言うのはいただけないですよ兄さん」

Kはゆっくりと身を起こした。
エスがその肩を優しく抱く。
少しだけ、圭は嫉妬した。
しかしそれ以上に驚きを隠せない。
アレが自分のコピー?

「『終わり』が用意したジブン用の器や。エラいモンやで」

近が事も無げに言う。Kが立ち上がった。
サングラスの右側が破裂している。
その奥の眼窩がサングラス以上に闇の色をし、深い穴を見せている。
血は出ている。
いや、赤い色の液体だが血ではないのかもしれない。
隣のエスがその手をとる。
握り締めている。
圭はまた少し嫉妬する。
言葉に詰まる。
Kの着ていたスーツのポケットから携帯の着信音。
エスがアクションを起こした。
携帯を取り出して、Kの代わりに電話口に出る。

「ヤバいねん、来てくれ」

圭はエスに向かって叫んだ。

「また逃げる気か!」
「このままおったらKがヤバい。ジブンは本体返してくれへんし。チカ兄がコワイしな」
「しやろ、俺、コワイやろ」

近がライフルを構えなおした。
圭は焦る。
近なら、エスのメモリーカードを破壊することなく、脳天に命中させるだろう。
あれは依栖本体ではない、だが圭は兄を撃つ事に躊躇いがある。
傷つけたくない。
見ると、肩からの流血のせいでエスの顔色は青褪めてきていた。
このままエスを連れ去りたい。
エスさえ「はじまり」に戻ってきてくれるなら、依栖との融合が可能なのに。




←back← →next→

一覧へ


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -