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「誰でもええねん。エス返せやコラ」
思い切り相手を睨んで凄む。
だがKはなんとも思っていないようだ。
平気な顔で、むしろ微笑んで圭を見返した。
「お前こそ。依栖を返してくれないか。それは、この少女の体だ」
「ちゃう。ちゃうやろ。そのロリータ小娘に挟まっとるメモカが、依栖のモンや。とっとと返さんかい」
Kの代わりに少女が答えた。
「交渉決裂って奴やな。K、殺てもうて」
「そうだな」
エスは甘えるような目つきでKに言った。
あの中身が自分の兄だと思うとまったく可愛く思えない。
だがKは納得した。
圭もホルダーから九十四式を取り出す。
構える。
「オノレが誰でもええねん。死ね」
「お前がな」
同時に三つの銃声が聞こえた。
一発は圭がKに放った物。
Kを掠らず、後ろのコンクリートの壁に穴を空けた。
二発目はKが圭に向けた物。
これも、圭を掠らず、遠くの土を撃った。
二人のケイはお互いに射撃の腕は無かったようだ。
三発目の銃弾にケイ達とエスは驚いた。
「なんや遅い思たら、やっぱりエス追っとったんかい」
「チカ兄やん」
派手なアロハ柄の和服、坊主に髭の男がアサルトライフルを構えてKの後ろから歩いてきた。
圭は再度驚いた。
大阪にいるはずの「はじまり」のメンバー・。
何故ここにいる?
「ジブンがトロくさいから手伝いにきたってん。そいつがエスかいな。エラい可愛い嬢ちゃんになっとんのう。あのゴツい依栖とは思えへんな」
近は少女エスを見た。
エスはその視線を同じ力で押し返す。
隣のKも構えた銃を近に向けた。
近はニヤニヤと笑った。
「なんやおかしい奴もおんのぉ。なんや、このグラサン、圭にそっくりやんけ」
「そなブサイクちゃいます」
「はじめまして、チカシ兄さん」
二人のケイが同時に喋った。
近が力の抜けた声でKに答えた。
「お前に兄さん呼ばわりされる筋合い無いわ。誰やねん」
「Kです」
「知らんなぁ。俺の知っとるケイはダサダサの京都弁使いよんねん」
と近が首を捻った。
細い目が更に細くなる。
考えているときの近の顔だ、と圭は思った。
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