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「なっ、何してんねん!エス、まさか本体に無茶しよったんちゃうか!」
圭は振り返り、音のした方向へ走った。
倉庫の隅。硝煙の匂い。
壁のあちこちに焦げた跡。
依栖が空ろな目線で斜め上に44マグナムの銃口を向けている。
その先を見る。
コンテナの上に、ゴシックロリータ服の少女・エス。
エスは、少女の表情とは思えないような曖昧な笑顔をした。
「本体は傷つけたない…ジブンも、殺りたないねんけどなぁ…どうしても兄貴の持ち物返さん弟は」
圭は震えた。
エスが真顔に戻る。
「殺ってもええんちゃう?」
「ええ事あるかぁボケ!カス!」
圭が焦る暇も無く、エスは小さな体にそぐわないマシンガンを構えた。
本気かもしれない。
圭は最期の瞬間を感じた。
その時。
パン!と大きな音がした。
44マグナムの銃声。
圭は依栖を見た。
無表情に依栖が銃を構えて立っている。
銃の口から煙が立ち上っている。
圭はそのまま顔を、コンテナの上部に向けた。
エスが肩から血を流している。
よろめきながら、後ずさりしている。
「エス!」
「うっさいボケ!本体にどんなシツケしとんねん。腹立つ!俺の体やぞ」
エスはマシンガンを投げ出し、ドン、とコンテナを力強く踏んだ。
姿だけは地団駄を踏む少女。
だが中身は二十歳の青年。
圭はコンテナに登ろうとしたが手段が判らなかった。
周りを見渡すが梯子のような物も見当たらない。
エスが乗っているコンテナの裏側にあるのだろう。
「手当てしたろかエス、降りてこい」
「アホ。こんな可憐な体でジブンのとこ行ったらすぐ捕まえられてまうわ。覚えとけよ!」
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