「高いだけありますねぇ」
「うん。凄いね」
豪奢な造り。
高級な、ラブホテル。
月に一度、日にちを調整して泊まりを約束する。
今回は夜のローカル情報誌から見つけた、高級ホテル。
「やる事一緒なのにね」
そう言って菅野は隣で茫然と立ちすくんだ杉浦を下から覗き込む。
「…色気が無いなぁかんちゃんは…」
「だってセックスする為だけの場所でしょう?」
「そうなんだけどさ」
「セックスするだけの部屋にこんな金掛けて…って思ってるから、杉浦さんもビックリしてるんでしょ?」
「雑誌で見たよりずっと豪華なんだもん」
「ボーナス様々」
「ホントに」
ボーナスが出たから、二人で出し合う事にして、このホテルを選んだ。
それぞれに、妻ともこうした高いホテルをデートのコースに組み込んだ事は無い。
ふっかりとしたソファに菅野が沈み込む。
杉浦も隣に腰を下ろし、持ち込んだコンビニの袋から缶ビールを2本取り出す。
菅野がその手を制する。
「ピザとか注文出来るかな」
「出来るんじゃない?」
「食べましょうピザ。適当に頼んでいいですか」
「いいよ」
どうせ菅野が殆ど制覇してしまうのだから。
こってりしたチーズを、杉浦の胃袋は受け付けられないだろう。
杉浦が二人横になってもまだ存分に余裕のありそうなベッドに、菅野が倒れ込んだ。
「ふっかふかだぁ」
嬉しそうに笑う。
デリバリーピザの広告を枕元で見つける。その横の電話、受話器を上げて、番号を押して。
「一番大きいサイズで、はい、30分ね、はいはい、ヒルズの206!」
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