食事と酒と会話を楽しみながら。
杉浦は目の前の三人を観察する。
妻。
自分には勿体無いほどよく出来た妻。
結婚してもうすぐ15年になる。
彼女が、年を取ったら子供を産めなくなるからと言って急いだ結婚。
結局子宝には恵まれそうに無い。
それでも構いはしない。妻との生活になんの不自由も寂しさも感じない。
菅野の妻。
菅野に見合った小柄な若い女性。
6つ年下の菅野より更に3つ若いと聞いた。
よくこの細身の体で三人も子供を産み、育てていると思う。
一番下の子供は昨年産まれたばかりだ。
昨年?
昨年だ、そうだ去年だ。
初めて菅野と寝たのは去年の、菅野の妻が妊娠している時。
杉浦は次に菅野を見た。
浮気の方向を間違ったのかな、君。
普通は女性と浮気するんだろう。
いや。普通でもしない。してはいけない。と、思う。
自分ならしないだろう。怖くて出来ない。
だが、した。
そうだ去年の春。
菅野が正社員になり。自分の直属の部下となり。二人で行動する事が多くなり、酔った勢いで。
「うぁ」
思わず呻いた。声が出てしまった。小さい声だった筈なのに。
「どうしました、杉浦さん」
大きな瞳で自分を見つめる菅野。整った顔。人を引き込む笑顔。
「う、ううん、なんでもないよ」
「ヒロキくんお酒飲み過ぎじゃないの?」
「いやいやまだ飲めます。奥さん、ご主人借りていいですか?」
「どうぞどうぞ。美由紀さんさえよければ」
「私はいいけど、菅野さんに迷惑かけないでね?二人とも明日早いでしょう」
「僕はともかく菅野くんは…酒には強いから」
「そうですねー。僕酒強いです、杉浦さんには弱いです」
杉浦以外の三人が笑う。
奥さん方、そこは笑う所じゃないんだ。
もう駄目だ、耐え切れない。
「菅野くん、どこ行きたい?」
「そりゃ杉浦さんが連れて行ってくれるならどんなとこでも」
「女の子のいる店は嫌よ、ヒロキくん。ねぇ真由ちゃん」
「そうですね、パパ、変な女と浮気なんかしちゃイヤ」
「しないってばー」
男とは浮気しますよ奥さん。変かどうかはその眼でごらん下さい。
ああ、足元が揺らめく。
午前様にはなると思うんでー、と言う菅野の言葉が頭の中で二往復する。


  

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