「やっちゃったでしょ?わかるんですケド」

突然の竹中の台詞に、むせた。

「やっぱり!カンカンに抱かれたのね!?」
「ないないないない!ないよタケちゃんじゃあるまいし!」

慌てる。

「ない」のは「菅野に抱かれる」。
「あった」のは「菅野を抱いた」。
事実が違う。

「何がタケと違うのよぅ」
「た、タケちゃんじゃあるまいし、僕らがそんな、仲がいいのは認めるけどそんな」
「オカマの勘でわかるんですケド。カンカンに抱かれたんだと思ったわ、思ってるわ」
「ないからそんなの」

あの小さな菅野くんに「抱かれる」なんて。

ない。

「なんでそんな事思ったの、タケちゃん」

尋ねてみる。

マエデン原田店にて。
辺見は一所懸命に売り場演出に力を入れて働いているのに、竹中は杉浦に疑いをかけてばかり。
仕事をして欲しい。
菅野くんは辺見ちゃんと一緒にあんなに働いてんのに。
僕とタケちゃんと来たら。

「なんでって、オカマの勘ですケド」
「…菅野くんに、ボクが抱かれるとかって、変じゃない?もし、もしだよ、そんな関係だったとして」
「怪しいわねスギサマ」
「あ、怪しくないよ」
「そうね、カンカンってバリタチって感じなんだもん」
「バリタ…チ?」
「攻める方のコトです。タケナカもそう」
「そ、そうなんだ」
オネエ言葉を使うから、攻められる方だと思っていた。

「カンカンは攻める方だと思ってるのよタケは。だから敵!」
「なんで敵?」
「スギサマを攻めたい者同士で敵でしょ?」

背筋が凍った。

竹中に抱かれる自分も、菅野に抱かれる自分も想像出来てしまって、怖くなった。
自分にはそんな素質があるんだろうか。
怖くなる。

「その反対語は何てゆーの?」
「タチの逆はネコよ。スギサマはネコっぽいもの。上品で可愛いです」
「ほ、褒められてるのかな?」
「そうですケド」
「あり…がと…」
嬉しくはないけれど。

しかし不思議だ。
何故体の関係を持った事はバレてしまうんだろう。
不思議だ。
全て、前と変わらないように接しているのに。

「スギサマの、カンカンを見る目がね、恋しちゃってるんですもの」
「まさか。タケちゃん、もう変なコト言わないで、業務に支障来たします。さぁタケちゃん、エントランス行ってサンプリング配ってきなよ」
「そーします。どうしたってスギサマは口開かないみたいだし」
開くわけないだろ。

菅野くんを抱きました、なんて報告。
竹中がどんなリアクションを取るのかなんて考えたくも無い。

「杉浦さぁん、ここに別のPOP貼りたいですぅ」
辺見が呼ぶ。
「どんなPOP欲しい?」
近付きながら。
菅野が辺見の隣で笑っている。
「杉浦さんの作ったアレ、通信料無料の奴がいいですよ。青い奴。」
「ああ、そうだねぇ。じゃあ辺見ちゃん、帰ったら店舗のPCに送っとくね。多分7時頃」
「了解ですぅ」
ニコニコと笑う辺見の隣では、ニヤニヤと笑う菅野。
スマイル姉弟、と竹中が言っていたのを思い出した。

店舗の外を見る。
晴天。
ドライブ日和。
かんちゃんとどっかに寄っても、7時までにはファイル送信出来るよなー。
そんな事を考えた。


20090715完


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