テルカは大らかで誰にも平等な長身美人24歳。
モコは気配り細やかなメガネ美人29歳。

美人同士でお付き合い。

竹中が小さく絶叫する。
「あんたらキレイでムカつくわ!キレイな順番に死ねばいいのに!!」
それを聞いてヒメが笑う。
「じゃああたしが一番最初だ!ごめん死ぬ!」
「ウルサイわヒメちゃん!正解だけにムカつく!なんなのこの職場。滅多に無いわよ美女揃いって」

家電量販店のマエデン原田店、携帯電話コーナー。
最大手マスト担当の二人は伊東テルカと武藤モコ。
ポップな端末で学生に人気のQoQo担当は佐上ヒメ。携帯電話コーナーリーダー。マエデンPC担当フロアマネージャー佐上ジュンの妻。
純増数ナンバーワンのエルデータ担当は辺見ナオコとオカマの竹中トモロウ。

テルカもモコもヒメも、そして辺見ナオコも、キャラクターは違えど全て美女揃い。

「竹中くんもオカマでさえ無ければいい男なんだけどなー」
辺見ナオコがニコニコと悪気なさげに笑って言う。
「オカマでもいい男よタケナカは!寧ろオカマだからこそいい男だと思って欲しいわ」
「いい男って言うとやっぱ菅野さんじゃない?」
モコが言うと、テルカは頷いた。
「うん、担当営業の中では一番だよね、顔」
同意するテルカに、竹中は不思議になる。

「モコさんが男の顔褒めてもテルカさんは嫉妬しないのぉ?」
「しないよーだって菅野さんの顔いいのは認めるもん。身長一緒だけどね」

テルカと菅野の身長は同じ。
ヒールの高い靴でも履けば、テルカが悠々と越すだろうその姿を想像して、モコは面白くてニタニタ笑ってしまった。

ヒメが思い出した様に言う。
「菅野さんちっちゃいじゃない?だったら早乙女さんの方が総合ではいーよーな気がするぅ」
「そんな事言うとジュンちゃん怒るよ?」
ヒメ以外の4人が一斉に同じ台詞を言った。
フロアマネ佐上ジュンは嫁一番。嫁第一。嫁以外は女ではない嫁一筋男。

「なんでここまでスギサマが出ないのよぅ!」
竹中の反論。
「タケナカ的にはスギサマが一番だわーかわいいわー上品だわー背も高いししっとりしてるしー」
「杉浦さんはカイワレなんだもん、ヘタレカイワレ…役立たず上司…菅野さんの方がいいもんー」
と言ったのは辺見。
竹中は面白くない顔で辺見を睨んだ。

平日の暇な時間帯。
原田市は県内2番目の人口を持つ地域だが、原田店自体が郊外も郊外にある為集客数も低く、平日のある時間帯に突然売り場に来客が無くなる時がある。

そんな時間帯の、少しのおしゃべりが、モコは大好きだ。
私語が良くない事はわかっている。
だけどコミュニケーションを全員で取る時間帯は少ない。
だから、そんな時だから。
くだらない話でモチベーションを上げたいと願ってしまう。

皆が楽しくやっていれば、商品だって売れる。
そう、モコは思っている。

テルカもそう思っているんだろうな、とモコは思う。
話の中心はいつもヒメとテルカだ。
年齢の違う二人は血液型が一緒のO型。
引っ張っていくのが好きな二人。
それを見ているのが、モコは好きだ。

そして竹中にまた尋ねられる。
「モコさんは、テルカさんとヒメちゃんが仲イイのに嫉妬しないの?」
「しなーい。だってテルカさんが楽しそうなの見てるのが好きなんだもん」
「へー」
「タケさんだって、杉浦さんと菅野さんがイチャイチャしてたって嫉妬しないじゃん」
「してるわよ!悔しいわよゲーハー菅野めぇ」
「ゲーハーって言っちゃだめぇ竹中くん」
辺見が止めるが、竹中の菅野罵倒は止まらない。

楽しい。
職場が楽しい。
こういうのが大好き。
モコは周囲を眺めて思う。

秋田に帰ってきて良かったなぁ。

モコは辛い恋を忘れる為、長く住んでいた東京から地元に戻ってきた。
10年付き合った恋人と別れ、それから出会ったのがテルカだった。
初めての同性の恋人。
自分に同性愛の素質があるとは思ってもみなくて、最初はテルカの態度に戸惑ったが。
今ではテルカと一緒に過ごす時間が楽しくて仕方ない。

恋人と同じ職場ってどうなのかな。
色々と不安なんだけど、でも。

それでも今、この時が楽しければいいのだろう、楽しめればいいのだろう。

「今」を一所懸命に生きる、それがおひつじ座A型、武藤モコ。


20090712完

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