「お、おい…ヒデノリ?どういうことだよ」
『ヨシタケ、俺はお前を助けることはできない』
「なっ!?」
『犠牲になってしまったモトハルも、体を張って髭を剃り落とされたんだ…友人としてその気持ちを理解する必要があると、俺は思うんだ』
「はぁぁあ!?ならお前、俺と代われよ!」
『いや俺はヨシタケの姉と兄弟じゃないから』
「ず、ずりぃぞヒデノリ!」
『じゃ明日どんな姿になってるか楽しみにしてるわ!』
「ちょ、待っ」

──ブッ


あんにゃろう…!
ヨシタケは携帯を強く握った。だがヨシタケは冷静に考えてみた。モトハルもこんな状況だったのかな、こんな気持ちだったのかな…と思い、そして友人との共感を得ようとヨシタケは覚悟を決めた。大丈夫、相手は一人だ。姉さんと一緒に来られたらヤバいが、まあでも二人だけならなんとかなるだろう。それに。


「…部屋から出なければいいし」


そう、部屋から出なければ何も怖くない。ここは俺の庭そのもの!姉さんからしても庭なのだが、姉さんの友達は初めて家に来た子犬と同然。こちらのが一枚も二枚も上手だ。ヨシタケはガッツポーズをした。
イケる、これはイケるぞ!


「あんた何してんの?」
「!!?の、ノックぐらいしろよ!」
「私ちょーっと出掛けてくるからさー、なまえのことよろしくね」
「は…?」
「ちょ!?出掛けるってどこへ!?私も一緒に行」
「いや、なまえはここでこいつの相手しといて。大丈夫だって、帰ってくるから」
「帰ってきてくれないと困るって!え、ていうか決定?私田中に着いてくから!」
「着いてきたら半年パシりね」
「!!ひ、ひど…!」


ヨシタケは二人の会話を唖然としながら聞いていた。
どういうことだ、意味がよくわからん、と事態を把握できないでいた。姉さんは友達を置いて出掛ける?友達は何のためにここに来たのかわかってるのか?こいつ友達なめてんのか。
ヨシタケは眉間にシワを寄せて自分の姉を見る。そこには心底楽しそうな表情で友達を見ている姉が居た。

これが自分の姉さんか、世も末だと思う。別に姉さんが出掛けたって姉さんの友達は姉さんの部屋で待ってればいいし、ていうかむしろ俺に構わないでほしい。俺は今日部屋でずっとファミコンしてるつもりだ。


「い、いいよ。田中が行ったあと、田中の部屋で待ってればいいし」
「残念、私の部屋鍵つきだから」
「えぇっ!?」


そういえば姉さんは女だからと親に頼んで自分の部屋だけ鍵をつけ始めた。俺は男だしそんなめんどくさいの無くても困らなかったから鍵つけなかったけど。まさか、こうなるとは自分でも思わなかった。
姉さんの友達であるみょうじさんのことを段々不憫に思えてきた。何故、どうしてこう姉さんは意地が悪いんだ。よく付き合っていられるなぁ、とみょうじさんを見たらバチッと目が合ってしまった。うわっ、すげー困ってるよ。俺に助けを求めているようだが、俺は姉さんに歯向かうことはできない。もう俺には首を横に振ることしかできなかった。


「そ、そんな…」
「じゃ行ってきまーす」
「あ、おいっ」


無責任すぎる姉に俺は頭を抱えるのだった。

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