デートって。俺とみょうじさんが?会長と姉さんが?いやいや、俺とみょうじさんならともかく、姉さんが会長とデートだなんて血祭りっていうレベルじゃないぞ。つーか何乗り気になってるんだよ俺。
絶望する俺を他所に、モトハルやヒデノリが顎に手を当てて作戦会議だと言わんばかりに机を囲んでいる。タダクニも唐沢も副会長も、それに参加しているようだ。
なに当事者置いて作戦会議してんだよ。


「お、おい、会長!あんたはそれで本当にいいんすか!?」
「いいも何も俺が言い出しっぺだからなぁ…」
「今なら取り消せますから!言ってやってくださいよ!」
「えー?でもヨシタケは彼女さんとデートしたいんだろ?」
「そりゃできるんならしたいけど、って何言ってんだ俺!姉さんの餌食になっても良いんすか!?」
「大丈夫。女の子の扱いは割と慣れてるから」


親指を立ててニッと笑う会長に俺は項垂れる。もうこうなってしまった以上誰も止められない。
項垂れる俺を他所に、ヒデノリたちが立ち上がる。そして俺に振り返ると、会長同様に親指を立てて笑みを浮かべた。


「ヨシタケ!俺たちに任せろ!」
「…………」


一番任せたくない相手だと突っ込むのは止めておくことにした。


放課後、俺たちはまた生徒会室に来ていた。その中にいるのは放課の時にいたメンバーだ。会長と俺は椅子に座り、他のメンバーはホワイトボードの前にいる。今からデート作戦の発表をするらしい。会長をちらりと見ると楽しそうに笑っていて、自分が場違いな気さえしてきた。


「さて、ヨシタケとみょうじさんのラブラブデート作戦の発表を始める!」
「ちょっと、俺とヨシタケの姉もいるんだけど」
「会長はできるだけヨシタケの姉を刺激させないでください。以上」
「はあ?!俺それだけ?!」
「会長の出番はちゃんとありますから。じゃあ、まずは…」


そこへ俺のポケットにある携帯が震える。なんだろう、と携帯を取り出しメール画面を開くと、相手はみょうじさんからだった。受信メールを開いて文章を読む。


「…はあ!?」
「?どうした、ヨシタケ」
「今メール来て、こっちに向かってるらしい」
「主語が抜けてるからよくわからんが、要はみょうじさんからメールが来て、みょうじさんとヨシタケの姉がこっちに向かってる、ということでいいか?」
「お、おう」
「さすが唐沢!」
「今から来るのか…じゃあ放課後デートでもどう?」


そう言いながら会長は足を組む。皆の目線が会長にいって、そしてお互いの顔を見合わせたあと頷き合った。俺一人置いてけぼりだ。


「放課後デート、いいじゃねぇか!」
「あぁ、なんかデートっぽいよな!」
「正直デートって何すりゃいいのかわからんかったし!」
「ならそれで決まりだ。ヨシタケ、みょうじさんにメールしておけ」
「お、おう…」


俺はもはやみょうじさんにメールを返して、返事をすることしかできなかった。
メールを返したあと、ヒデノリがゴホン、とわざとらしく咳をする。そして目をすっと細めたあと口を開いた。


「まず会長、あなたには校門の外で二人が来るのを待っていてもらいたい」
「ん、お安い御用さ」
「で会長が二人と話しをしている途中でヨシタケを投入する!」
「そこで俺が行くのかよ!おかしくね?!」
「自然を装え。演技だ、ヨシタケ」
「無茶言うな!」
「ヨシタケが「姉さん?!なんでここに!?」って言う。そこで会長が「せっかく来てくれたんだし俺たちとお茶しない?」って言うんだ」
「なるほど」
「いやなるほどとか言ってないであんたも突っ込めよ!」


ヒデノリの作戦に誰も突っ込まない。普段、ボケに回る自分だけれどこの時ばかりは突っ込まずにはいられなかった。会長もその気だし、ヒデノリたちもその気だ。やっぱり俺だけ場違いすぎる。

だがここでふと思った。

こいつらは面白がって作戦を立てているんじゃなく、本気で俺とみょうじさんのことを思って作戦を立ててくれているのではないか、と。
俺はぐるりとヒデノリたちを見る。そこには誰も面白がっている者はいなかった。皆、真剣そのものだ。ここで俺が嫌だと言えば、こいつらとの友情にひびが入るだろう。
せっかく考えてくれたんだ。場違いだと思っていたけれど、俺もここに居る時点で作戦に乗っているのと同じ。それならもうここはやるしかない。みょうじさんと俺を応援してくれるこいつらのためにも。


「くっ、やってやらぁあ!」
「おぉ、ヨシタケ、その意気だ!いざ行かん!みょうじさんの元へ!」
「おう!行きましょう会長!」
「え、う、うん…」


戸惑う会長の腕を引っ張り、俺たちは生徒会室を後にした。


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