俺たちは先生に走るなと注意を受けながら、生徒会室に乗り込む。生徒会室には唐沢とモトハル、そして副会長がいた。生徒会室を見回しても会長の姿はない。モトハルが怪訝な顔付きで俺たちを凝視する。


「おいお前ら、いきなりどうし…」
「モトハル、会長は!?」
「は?」


ヒデノリがそう言うとモトハルは眉間に皺を寄せ、副会長と顔を見合わせた。息を整えていると腕を組んでいる唐沢が口を開く。


「何があった。事情を話せ」
「唐沢…!会長が、会長が…!」
「俺が何だって?」


その声にハッとして生徒会室の一番奥にある机に視線を向ける。すると、後ろ向きだった椅子が右に回り出し、そこからどや顔をした会長が現れた。
いるなら返事しろよ。そう心の中で突っ込んだのは俺だけではないはずだ。


「で、どうしたの?」
「会長の身が危険です!」
「はあ?」


ヒデノリがそう言うと会長は意味がわからんというような感じで首を傾げる。そんな暢気なことしている場合ではないのに、会長には危機感というものがないのだろうか。


「俺の身が危険ってどういうこと?俺、自分の身が危うくなるほどの行いはしてないつもりだけど」
「ちょっと自覚あるんすか?!」
「あはは、やだなぁ、そんな顔しないでよ副会長」


けらけら笑う会長に、副会長は頭を抱える。普段から生徒会が何をしているのかわからない俺らは首を傾げるしかなかった。


「それより、何の危険が会長に迫ってるんだ?」
「おぉ、さすが唐沢、冷静沈着!」
「会長とは大違い!」
「ちょっとヒデノリ、今聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」
「実はかくかくしかじか」
「……それは本当か?」
「あぁ、みょうじさんからのメールが証拠だ」
「おーい、俺を無視すんなよー…」


会長の声に俺たちは一斉に会長へ視線を向ける。注目を浴びた会長はビクリと肩を跳ねらせたあと、顎に手を当てて「詳細が聞きたいな」と口にした。さっきの話聞いてなかったのかよ、という視線が会長に注がれる。


「いやかくかくしかじかでわかるわけないだろ!しかも俺抜きで話してるし、俺の身が危ないのに本人が詳細知らなかったら、自分で自分の身を守れないんだけど!」
「会長、自分で自分の身を守れるんすか?」
「あー、あのりんごちゃんさんにやられてるしなあ…」
「お前ら俺のことどー思ってんの!?」


嘆く会長に俺たちは顔を見合わせる。苦労してるんだな、副会長、モトハル、唐沢。そう込めた目線で見やれば、三人は全くだと言わんばかりに肩を落とした。



*     *     *



「なるほどね。この間助けたヨシタケの彼女さんの友達が俺に会いたい、と」
「いや俺の彼女じゃないッス…」
「しかもヨシタケの姉か…うん、面白そうじゃないか」
「はあ?正気ですか、会長」
「あ、ならさー、この際ヨシタケとヨシタケの彼女さん、そんで俺とヨシタケの姉でダブルデートってのはどう?」
「……………」
「……………」
「……………」

『はあぁっ!?』


会長以外の六人の声が生徒会室に響く。何を馬鹿なことを言い出すんだこの人は。
俺とみょうじさんと姉さんと会長でダブルデート?みょうじさんはともかく、あの馬鹿な姉さんと会長がデート?うわっ、やりたくねぇ、絶対やりたくねぇ。
そんなことを思っていたら会長が苦笑いを浮かべて口を開く。


「ヨシタケめっちゃ嫌そうな顔してんなー」
「そ、そりゃ嫌に決まってんじゃないすか!みょうじさんとならともかく、なんで会長と姉さんが!」
「おい今然り気無くみょうじさんとなら、て言ったぞ」
「やっぱり満更でもないのか」
「ぐっ……ちょっとお前ら黙ってろ!」


ここぞとばかりに揚げ足を取るヒデノリとモトハルに、自分の顔が熱くなってくる。会長が変なことを言ったからだ。そう、全ての原因は会長だ。
会長をじろりと睨み付けると、会長は楽しそうに笑っていた。ぶん殴りたい気分だ。


「まーまー、落ち着けよヨシタケ」
「あ、あんたは姉さんがどんな奴か知らないからそう言えるんだ…!」
「ん?じゃーヨシタケの姉ってどんな人なの?」
「乱暴者」
「暴力女」
「馬鹿女」


タダクニとヒデノリと俺で口を揃えて言うと、会長の顔が強張る。笑顔を引きつらせながら「ヘーソウナンダ」と片言で返事が返ってきた。
そんな奴とダブルデートできるのか、会長。


「会長、ここはヨシタケのために頑張ってください」
「はあ?!か、唐沢…?」
「そっすよ。言い出したのは会長ですし」
「えぇ?!モトハルまで!?」
「…会長、大丈夫です、骨は拾いますから…!」
「ちょっと勝手に殺さないでよ!」


唐沢とモトハルと副会長まで変なことを言い出し、俺は顔が引きつる。
そうだ、俺にはヒデノリとタダクニがいる。ヒデノリやタダクニなら止めてくれるよな?
そう祈るように振り返れば、ヒデノリは聖母のような笑みを浮かべ、タダクニは哀れみの目線を俺に向けていた。
ちょっと待て、なんだこの二人の表情は。嫌な予感がする。


「ヨシタケ、この期を逃すな!みょうじさんとデートしてこい!」
「…無事に帰ってこいよ、ヨシタケ」


マジかよ。
呆然とする俺に、ヒデノリはぐっと親指を立ててくる。無償に苛ついた俺は容赦なくヒデノリの手を叩き落とした。


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