なまえを送った後、ヨシタケはすぐに携帯を取り出しヒデノリの番号を発信する。
3コールした後、もしもーし、どちらさまぁ?と明らかにからかっているだろうヒデノリの声に、ヨシタケは少しイラッとした。



「ヒデノリお前なぁ…!」
『あ、みょうじさん無事に送ってあげたか?』
「送ったよ!ていうかお前なぁ!」
『まーまー、そう怒んなよ。今俺とタダクニ、マックにいるんだけど』
「今から向かうからな!」
『おー、気をつけて来いよー』



気の抜けたヒデノリの声にヨシタケは荒々しく携帯をポケットにしまう。

全く何を考えているんだ、あいつらは。

苛々しながら歩いていると、ふと手にある傘が目に入った。それを見て、ヨシタケはなまえの顔が脳裏に浮かび、苛々した気持ちが少しだけ和らぐ。そしてなまえと番号を交換をした際に言われた言葉を思い出した。

そういえばお礼に何か奢るとか言ってたなー…でも、本気なわけないよな…。

きっとただの社交辞令だろう。そうとわかっているのに少し残念な気持ちになるのは何故なのか、ヨシタケはわからなかった。





マックに着くと、店内に気味が悪いくらいの笑顔をしたヒデノリと、心配そうな顔をしたタダクニが席に座っていた。ヨシタケはハンバーガーのセットを頼み、それを持ってヒデノリとタダクニの席に向かう。



「やぁやぁ、さぁ座りたまえ。あ、タダクニ君はこちらに来たまえ」
「………」
「変な喋り方すんなよ…」



そう言いながらタダクニは席を立ち、ヒデノリの隣に腰をおろす。ヨシタケはこれから何が行われるかすぐに察したが、「逃げようなんて考えは捨てるんだな、ヨシタケ君よ、君はもう包囲されている」と言うヒデノリに、ヨシタケは溜め息をつくしかなかった。
とりあえずタダクニとヒデノリの前に座ったヨシタケは、蓋にストローを差し込み烏龍茶を飲む。ヒデノリは生き生きとした顔で、ヨシタケに話し掛けた。



「おい、ヨシタケ。みょうじさんとはどんな感じだったんだ?」
「あのな、最初に言っておくけど、俺とみょうじさんは付き合ってなんかないからな」
「ははは、わかってるってー」
「はぁ?!じゃあなんであんなこと…」
「まぁそれは置いといて!で!みょうじさんと何を話したんだ?」
「良くねぇし…てか何を話したって言われてもな…」



いくら仲の良い友達でも、どんな感じだったのかと聞かれるのは恥ずかしい。曖昧な返事でもしてやり過ごそう。

そう思ったヨシタケは当たり障りのない返事をする。しかし、ヒデノリはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。その様子をタダクニは心配そうに見守る。



「何も話してないわけないだろー」
「…はぁ、世間話しながら帰っただけだよ。あ、内容は覚えてないからな!」
「えー、ついさっきまで一緒に居たじゃーん。覚えてること全部話そうぜ、な?」
「仮に覚えていたとして、なんで話さなきゃいけないんだよ」
「ヨシタケ、俺たちはキューピッドなんだぞ」
「そんなん頼んでねーよ」



何がキューピッドだ、半ば強引だったじゃないか。それに俺は仲を取り持ってほしいとか頼んでない。本当勝手に決めないで欲しい。

ヨシタケが強い口調でヒデノリに抗議するが、ヒデノリはヒデノリでヨシタケの言葉にきょとんとして、そして口を開いた。



「お前、みょうじさんのことスキなんじゃないの?」
「………は?」
「え、まさか自分で気付いてないとか?」
「…な、何が…?」
「おいおい、この感じはマジっぽいな…」
「だ、だから、なんのことだよ」
「ヨシタケ、お前みょうじさんのことスキなんだろ?」
「ス、スキィ?!いい意味わかんねぇし!」
「お、おい、ヨシタケ落ち着けよ。ヒデノリもさ、あんまりヨシタケのことお節介すんなよ」
「だぁってー」



楽しいんだもん、とでも言い出しそうなヒデノリにタダクニはすかさず、だってじゃねぇよ、と突っ込む。そんなやりとりをよそに、ヨシタケは顔に集まる熱を逃がそうと烏龍茶を一気に飲み干す。

ヴー、ヴー…

そこに一件のメールがヨシタケに届く。
ヨシタケは烏龍茶を飲みながら携帯の画面を見ると、思わぬ人からのメールだった。それを見た瞬間、口に含んでいた烏龍茶が変なところに入り、思いっきりむせてしまった。
突然むせたヨシタケに、ヒデノリとタダクニは顔を見合わせ、とりあえずヨシタケが落ち着くまで待つことにするのだった。


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