今回こそはちゃんと家まで送らせてください、と真剣に言うヨシタケくんにまた胸がキュンとなったのは言うまでもない。
無事家に着いた私はヨシタケくんの背中が見えなくなるまでボーッと見つめていた。

あれから当たり障りのない会話をしながら、冒頭に書いてある通り、今回は家の前まできちんと送ってくれた。ヨシタケくんとの会話は何を話していたかよく覚えていない。番号を交換したことに浮かれていたのかもしれない。ただ覚えてることといえば、ヨシタケくんはかなり私に気を遣ってくれていたような気がする。ヨシタケくんよりひとつ歳上なのに番号を交換したくらいで浮かれて、しかも気を遣われるなんてなんだか情けない。

ヨシタケくんの姿が見えなくなると私はハァと一息ついて、玄関へと向かう。今日1日長かったようで短かく感じた。
それにしても私ってばヨシタケくんと仲良くなってからずっと浮かれっぱなしだ。田中の弟だからか、ヨシタケくんとは気が合う気がする。あちらはどう思ってるかはわからないけど…。
ただ気が合うだけだからか、それとも。

そこまで考えたあと胸がぎゅうと締め付けられる感覚に、私は項垂れた。



「…マジかー」
「おかえり、何かあったの?」
「ただいま…なんもないよ…はぁー」



リビングから顔を出すお母さんに、私は明らかに何かあったような態度だったと思う。そんな私にお母さんは首を傾げて、聞こうか聞こまいか悩んだ末、何かあったら遠慮なく言いなさいね、と言ってリビングに戻っていった。空気読める母でよかった。

部屋に戻り鞄を机の上に置く。
とりあえず部屋着に着替えるか、と制服を脱ぎ部屋着に着替える。着替えたあと、机の上に転がっている携帯が目に入った。



「…何か送ろう」



誰に、と言ったらもちろんヨシタケくんで、私は携帯を手に取るとベッドの上に寝転んだ。
メール画面を開き、電話帳からた行を選択するとすぐに"田中ヨシタケ"を見つけた。名前を見て少しだけ心拍数が上がる。宛先にヨシタケくんを選択すると、メールの本文へと移った。



「なんて送ろう…」



どう送ろうか悩む。
とりあえず"今日は色々助けてくれてありがとう"と打ってみる。うーん、なんか素っ気なくないか?メールって最初が肝心だよね…そんなことを思いながら色々と打ったり消したりを繰り返す。枕元に携帯を置いて、私は土下座ポーズで頭を抱えた。

なんか恋する乙女みたい、いや多分これはきっと恋なんだろうけど…!



「…お礼は絶対言わなきゃだよね!」



独り言が虚しく部屋に響く。
まずは今日のお礼だ、そう思い立った私は携帯を手に取り、本文を打ち始めた。



「"今日は助けてくれたり、家まで送ってくれて本当にありがとう!"…で、後は何を付けたらいいかな…」



確かテレビかなんかで相手から返信される方法としてクエスチョンマークで送るといい、と書いてあったような気がしないでもない。
ふと時計に目をやると、メールを送ろうとして既に30分以上は経っていた。悩みすぎだろ自分。



「"ヨシタケくんももう家に着いた?"……で良いだろう、か…」



とりあえず打ってみたは良いものの、これは客観的に見てどうだろうか。客観的に見てくれる相手がいないから自分で判断するしかないのだけれど、ああなんか不安で胸がいっぱいだ。でも送らなければ。今後のためにも!
完璧とまでは言えないが、とりあえずこれを送ってみることにした。
ああ、手汗がすごい。



「…送、信!」



送信ボタンを押すと送信される画面が出てくる。キャンセルボタンを押したい衝動にかられるがなんとか抑えていると、送信しました、の画面が映った。



「…あれで返ってくるかな…」



そう呟くと私は携帯をベッドに残し、逃げるように部屋を後にした。



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