遠ざかっていくヨシタケくんの友達の背中を呆然と見つめる。二人の姿が見えなくなった後、そっとヨシタケくんを盗み見ると、ヨシタケくんの表情は心ここに在らずといった表情をしていて、すごく申し訳ない気持ちになってしまった。



「あ、あの、ヨシタケくん…」
「…なんすか」
「本当にごめんなさい…」



頭を深く下げてヨシタケくんに謝る。こうなってしまったのも全部自分のせいだ。
私が調子に乗って傘を届けに来たのがそもそも間違いだった。こうなるんだったら、田中に尋問されてでも姉である田中に渡しておくんだった。
頭を下げて謝る私に、ヨシタケくんは慌てたように声をあげる。



「ちょ、そんな頭下げるほどじゃないっすよ!」
「いや本当にごめん、私が傘なんか持ってくるから…」
「いやいや、みょうじさんが傘持って来てくれてすっげぇ助かりましたし、その、あの」



なんて言ったらいいのかわからないのか、ヨシタケくんは言葉を詰まらせる。私は頭を上げるが顔は伏せたままで、ヨシタケくんには本当悪いことしたなぁと肩を落とした。
そんな私にヨシタケくんが必死にフォローしようとしているのか、うーん、と腕を組み考え込んでいた。



「ヨシタケくん、私はいいからあの二人追い掛けなよ!」
「えっ、でも」
「今なら間に合うって!あ、なんなら私も一緒に行ってあの二人に誤解だって言おうか?」
「う、」



私がそう言うとヨシタケくんは眉をひそめて頭をかいた。何か躊躇うことでもあるのだろうか。私は首を傾げてヨシタケくんを覗き込む。



「…ヨシタケくん?」
「あ、あー…その、もういいっすよ。今追い掛けて誤解だって言っても、あいつら聞かないと思うし」
「え、でも誤解されたままでいいの…?」
「や、良くない…すけど」



はっきりしないヨシタケくんに困惑する。私はこの学校に来ることはもうないと思うし、ヨシタケくんの友達に会うこともない。だから困るのはヨシタケくんだけだ。
ヨシタケくんはハァー、と盛大に溜め息をついた。



「もう誤解解くのも面倒なんでこのままでいいっす」
「えぇ!?」
「…あっ、みょうじさんは嫌、ですよね」



眉を八の字にさせて気まずそうに言うヨシタケくんに、私はえっ、と声をあげる。
嫌ってヨシタケくんの彼女になってることが?え、そういうことだよね?ヨシタケくんの、彼女…。そう考えながらちらりとヨシタケくんを見上げると、カァッと顔に熱が集まるのを感じた。



「明日あいつらに会ったらちゃんと言っておくんで」
「あああの、私は別に嫌じゃない、です…」
「え」
「…あ」



ヨシタケくんは顔をポカンとさせて私を凝視する。その反応に、私はその場で頭を抱えて転がり回りたい衝動に駆られた。
何言ってるんだ自分は!これじゃあまるでヨシタケくんに告白してるみたいじゃないかぁぁあ!
自分の発言が恥ずかしくて顔を俯かせる。ヨシタケくんの顔なんて見られたものじゃない。穴があったら入りたいくらいだ。



「………」
「………」



ヨシタケくんがどんな表情をしているか気になるが、嫌そうな顔をしていたらと思うと怖くてできなかった。しばらく沈黙が続き、そしてその沈黙を破ったのはヨシタケくんだった。



「と、とにかく、送りますんで…帰りましょっか」
「そそ、そうですね!おお願いします…!」



ヨシタケくん以上に吃りまくる自分が情けなくて仕方なかった。


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