目が点になるとはこのことを言うのだろう。
ヨシタケくんの発言に私と男子生徒は呆然とするしかなかった。何言ってるんだ、とヨシタケくんを見つめたら自分に合わせろと言うような眼差しを向けてくる。できるわけないだろ、そう言いたかったが口にせず表情で訴えてみた。伝わっただろうか。
しばらく沈黙したあと、男子生徒たちは噴き出し笑い始めた。



「ははは、そうなの?そこの子、さっき友達の弟とか言ってたじゃん」
「恥ずかしいからそう言ったんですよ、な?」
「えっ、あっ、そう、です」



そんな嘘をよくもまぁスラスラと言えるものだ。さすが田中の弟だけある、て感心してる場合か。
いきなり振られたものだから歯切れの悪い返答をしてしまった。その返答に男子生徒たちは納得するどころかニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、私に目線を移す。きっとからかうつもりだろう。



「へぇー…ねぇ、本当にこの弟くん彼氏なの?」
「…彼氏ですよ」
「ふーん?じゃあ…キスして証明してくんねぇ?二人がコイビトだっていう証明」
「「は?」」



何を言い出すのかと思ったらキスをしてみせろというむちゃくちゃなことを言い出した。
キス…?……キスぅぅう?!
顔に熱が集まるのを感じながら恐る恐るヨシタケくんを見上げる。するとちょうどヨシタケくんも私を見ていたのか、バチッと目が合ってしまった。慌ててパッと目をそらす。

マジでするの?こんなに人がいる前で?いやいくらその設定だからといって、ききキスなんてするわけないよね…でもしなかったらしなかったでヨシタケくんはこの人たちに嘘呼ばわりされて、明日からからかわれ続けるかもしれない。それだったらいっそキスしてこの場を治めたほうが…いや、キスしたところで逆にからかわれる可能性もある。

色々な考えがグルグルと頭の中を駆け巡るが、二人にとっての良策は浮かばなかった。
もし…もしもキスするとして私はヨシタケくんとキスできるのだろうか。



「………」
「………」



ヨシタケくんもそれっきり黙ったままで、私はチラリとヨシタケくんの顔を盗み見る。
別にヨシタケくんのことは嫌いじゃないし、優しいし面白いしそれなりにかっこいいし、ヨシタケくんとキスできるかって聞かれたらできる…て自分は何を考えてるんだ!
そんなことを考えたていたらなんか変に意識し始めた。恥ずかしくなって私はなにも言えずに顔を俯かせる。
もう誰でもいいから助けて!



「…ソレしたらどっか行ってくれるんすか?」
「!ちょ…」
「ああ、俺らも人のもの取るほど落ちぶれちゃいねぇからな」
「……(嫌がってる女の子を連れていこうとしてる時点で落ちぶれてるだろ)」
「嫌がってる子を連れていこうとしてる時点で落ちぶれてるだろ」



悪党みたいなことを言う男子生徒に私は心の中で突っ込み、勇気のあるヨシタケくんは鋭い突っ込みをいれる。ヨシタケくんにそう突っ込まれたのが癪に触ったのか、怒りを露にして早くしろよと催促してきた。
えっ、本当にキスするの?とヨシタケくんを見上げる。ヨシタケくんは至って真剣な顔をしていて、その表情にドクンと心臓が飛び跳ね大きく脈を打ち始めた。ヨシタケくんはそうっと私の両肩を掴む。



「ヨ、シタケくん…」
「…すみません、みょうじさん」



ヨシタケくんの名前を呟くと、ヨシタケくんは申し訳なさそうな表情をしてもう少しの我慢ですから、と呟いた。もう少しの我慢てどういうことだ。そう返したかったがどんどん近付いてくるヨシタケくんに、私は覚悟を決め思いっきり目を瞑った。


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