「友達の弟を待ってるんで暇じゃありません」
「友達の弟?そんなの放っといて遊びに行こうぜ」
「行きません」



真田北高校の門の前で大人しく待っていたはずなのに結局男子生徒に絡まれてしまった。無視するにも何をされるか怖いので受け答えはするが、そのかわりすべて否定の言葉を口にする。
それにしても暇じゃないって言っているのにこの人たちはしつこすぎる。たいしてかわいくもない私を構う暇があったらそこらのかわいい女の子をナンパすればいいのに、と心の中で毒づく。



「いいじゃん、奢るからさ」
「行きません、構わないでください」



つっけんどんな態度をする私に男子生徒はハァ、とわざとらしく溜め息をついた。そうだ、その調子でもうどこかへ行ってくれ。



「みょうじさん、こんなとこで何してんですか」
「!え、あ、よ、ヨシタケくん!?」



男子生徒の間からヌッと現れたヨシタケくんにびっくりする。そんなところからよく出てこれたな、と感心していたら周りの男子生徒たちは私とヨシタケくんを交互に見て、なぁんだ、と口を開いた。



「この子待ってたの?」
「えっ…」
「そんじゃ、友達の弟くんとやらにも会えたんだし、ちゃちゃっと用事済ませて俺らと遊びに行こうぜ」
「えぇ!?」



ヨシタケくんを見上げるとヨシタケくんはまだ状況を理解できていないのか目を丸くさせて私を凝視する。確かに友達の弟には会えたけど、ここは空気を読んでさっさとずらかってくれよ!そんな心の叫びは誰にも聞こえるはずもなく、早く済ませろよ、と言いたげな表情をして私たちを見つめる。
あぁ、なんでこんなことに…。



「…みょうじ、さん?」
「……これ、この間の傘です」



ヨシタケくんを巻き込むわけにはいかないのでとりあえず目的の傘をヨシタケくんに渡す。ヨシタケくんは渡された傘に、えっ、と一瞬びっくりしたがすんなり受け取ってくれた。



「この間は本当にありがとう」
「ど、どういたしまして」
「じゃあ、迷惑かけるわけにもいかないし」



またね、と苦笑する私にヨシタケくんは眉をしかめる。男子生徒たちは終わったと思ったのか、早く行こうぜーとニヤニヤ笑いながら催促していた。どっかでトンズラこいてやる、そう思いながら歩こうとするといきなり誰かに腕を引っ張られた。



「えっ」
「すんません、俺まだこの人に用があるんで」
「は?もう用事終わったんじゃねぇの?」
「おいおい、弟くんさ。彼氏じゃねぇんだから、そんな用事後でもいいだろ?」



腕を引っ張ったのはヨシタケくんで、ヨシタケくんは男子生徒たちに一歩も引くことなく真剣な表情でそう言った。用がある、というのは何なのだろうか。ていうか彼氏じゃないから後でもいいって、自己中すぎやしないか。ヨシタケくんがそう言ってるんだから諦めてどっか行けよ。
そう思いながらも私は何て言ったらいいかわからず、思わずヨシタケくんを見上げる。ヨシタケくんのその真剣な表情に、胸がギュウと締め付けられた。



「彼氏ですけど」
「…は?」
「…へ?」
「この人の彼氏。俺が」
「………」
「………」



まるで今決めたんだと言うヨシタケくんに、私と男子生徒たちは目を点にさせるのだった。


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