雨が降りだしたのはちょうど6時間目が終わった後だった。ヨシタケが雨降ってきたか、と呟けばヒデノリが三人仲良く帰ろうな!と嬉しそうに言うのを見て、どんなノリなんだよとタダクニは溜め息をつく。
帰りのHRが終わったあと、席を立ったモトハルはふと校門に目を移した。誰かが傘をさして校門の前に立っている。



(…誰だ?)
「おい、モトハル、生徒会行くぞ」
「お、おう」



傘の色は男でも女でもさせるような色だったからモトハルはその誰かが男か女か判断がつかなかった。服装も門が死角となっていて、男か女かわからない。モトハルは唐沢に着いていこうと歩き出すがもう一度振り返り、門の前に立っている人を見る。



「…モトハル?」
「!わりぃ。行こうぜ」



唐沢が不思議に思い振り返る。モトハルは慌てて唐沢の後を追った。



一方、ヨシタケたちは今日もゲーセン寄ろうぜと言いながら廊下を歩いていた。



「今日こそあのクマちゃんを手に入れてやる!」
「金貸さないからな」
「俺もバイト代入るまで金ねぇから貸せないしやれないわ」
「なんだよ二人ともケチだな!」
「いや俺はバイト代入るまでねぇって言ってるだろ。タダクニのほうがケチだ」
「俺だって貸せるほど金持ってねぇもん。だからケチじゃない」



ケチ、ケチじゃない、ケチ、ケチじゃない、と言うヒデノリとヨシタケにタダクニはめんどくせぇ、と内心毒を吐く。むしろヒデノリはどうしてそんなに金があるんだと突っ込んでやりたかったが、どうしてかそういう気分ではなかった。



「…雨だからかな」
「?なんか言ったか?タダクニー」
「いや、なんも」



下駄箱に着き、靴に履き替える。未だにケチ、ケチじゃない、と言い争う二人にタダクニは傘を広げて置いてくぞーと声をかけた。二人は慌てて靴に履き替える。



「…?」



二人を待つなか、タダクニは校門の前で数人の男子生徒が物珍しい視線を向けているのに気付いた。何かあったのだろうか、と首を傾げたらちょうどヒデノリとヨシタケが来て傘の中に入ってくる。タダクニは二人に挟まれ眉間にシワを寄せた。やっぱり三人はキツい。



「おいもうちょっとそっち行けって、俺濡れてるんだけど」
「いや俺も濡れてっから。タダクニ、もうちょいそっち行って」
「お、前ら、わざとだろ!」



ヒデノリとヨシタケはニヤニヤしながらタダクニを押し合う。わざとだとわかっているが、こいつら加減を知らないのか本当にぎゅうぎゅうつめてくる。悪ふざけもいい加減にしてほしい。
一本の傘に三人の男がぎゅうぎゅうになりながら校門を出る。タダクニは苛々が募って傘を放り投げようとしたとき、女の子の声が聞こえた。自然と顔をそっちに向ける。



「友達の弟を待ってるんで暇じゃありません」
「友達の弟?そんなの放っといて遊びに行こうぜ」
「行きません」



絡まれている女の子は男子生徒に囲まれていて顔が見えない。お気の毒に、と思うと同時にタダクニは、ん?と首を傾げた。
どこかで聞いたことがあるような。そう思ったタダクニはふとヨシタケに視線を向ける。ヨシタケもタダクニ同様、どこかで聞いたことのある声だと思っていた。



「聞いたことある声だよな」
「ヒデノリもそう思うか?」
「タダクニも?おい、ヨシタケは?」
「……まさか」



そう呟きヨシタケはタダクニの傘から出て、絡まれている女の子のほうへソロソロと近付いて行った。


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