帰りのHRが終わり教室から空を見上げると、今にも降りそうな雲行きになっていて慌てて席を立った。急がなければ雨が降ってしまう。
田中にはあらかじめ今日は一緒に帰れないことを言っておいた。なんで帰れないの?と問い掛けられたが、今日母親に買い物頼まれたからと嘘をつくと田中はふーん大変だね、と信じてくれたようで助かった。



(急がないと)



真田北高校まではそう遠くはない。下校時間が中央高校より遅いから急げば間に合うだろう。いざ真田北高校へ、と少しドキドキしながら足早に教室を出るのだった。


真田北高校へ向かう道中、ポツンと頬に雨粒が降ってきた。とうとう降ってきたか、そう思いながら鞄から折り畳み傘を取り出し傘を広げる。



(下校時間はまだだから大丈夫だとは思うけど)



携帯を取り出し時間を確認する。うん、まだ大丈夫そうだ。距離的にもうそろそろ学校に着いてもおかしくないんだけどな。
傘を広げてから少し歩いたところで本格的に降り始めた。ポツポツと傘に当たる雨粒を聞きながら、ふとあの日のことを思い出す。



(そういえば相合い傘してたんだっけ)



人生初の相合い傘を友達の弟と体験するなんて、と苦笑する。そしてトラックから守ろうとして引き寄せられたときのことをふと思い出し胸がキュンとなった。



(あのときのヨシタケくん、かっこよかったな…)



そう思った私はすぐにハッと我に返り首をブンブンと横に振る。何を考えているんだ、自分は…!一個下の、しかも友達の弟なのに何キュンとしてるんだ!
そんなことを考えているうちに学校らしき校舎が見えてきた。校舎が見えてきて自然と小走りになる。校門の前に着くと○×県立真田北高校という文字が門に刻まれていた。校門から顔だけを覗き込む。



(間に合ったみたい)



携帯で時間を確認すると真田北高校の下校時間とされる時間より20分早かった。あと20分か、早く帰りたいなとそう思う反面、もうすぐでヨシタケくんに会えると楽しみにしている自分がいて、それを否定するように思いっきり首を横に振る。



(うぅ、さっきから本当おかしいぞ自分)



なんだか暑くなってきて一先ず落ち着こう、そう思った私は大きく深呼吸をした。


それから20分もの間何度も携帯を確認したり、何度も深呼吸したりと結局落ち着くことができなかった。真田北高校からチャイムの音が聞こえた瞬間背筋がピンと伸びる。



「!うわ、出てきた…!」



チャイムが鳴り校門から顔だけを覗き込むと数人の男子高校生が校舎から出てくるのが見えた。ヨシタケくんは金髪だし、きっとすぐわかるだろう。誰かに声をかける勇気もないので、ヨシタケくんが来るまで私は校門の前でずっと待っていなければならない。
男子生徒が校門から出ていくのを横目に、とりあえず金髪の男子生徒を見つけることに専念した。こんなところに女子がいるのが物珍しいのか、ちらちらと視線を感じる。どうか絡まれませんように、そう祈るがどうやら神様は私を見放したらしい。



「きみ、こんなところで何してんのー?」
「!えっ」



できるだけ絡まれないように俯いていたのにも関わらず、見知らぬ男子生徒に話し掛けられてしまうのだった。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -