四時間目が終わり、お昼休憩に入る。ヨシタケはいつものようにヒデノリとタダクニと昼ご飯を食べていた。ふと、窓から空を見てみるとさっきまでサンサンとしていた太陽が消え灰色の雲が空一面に広がっていた。
ヨシタケは箸を加えながら何気なく話を切り出す。



「次の授業何だっけ?」
「体育じゃなかった?」
「今日もサッカーだよな…俺またキーパーだわ」
「お前意外にキーパー上手いじゃん」
「そーそー。ミツオ君のあのシュート取るんだもんな」



ヒデノリはでも顔面当たったら痛いから雨降らないかなー、と呟き空を見上げた。ヨシタケもタダクニもつられて空を見上げる。曇り空を見つめるヨシタケは、あっ、と小さく声をあげた。それにヒデノリとタダクニはヨシタケへ視線を移す。



「やっべ、今日雨降るかな?」
「あー、確か午後から60%だったような」
「マジで?今から雨降らねぇかな、サッカーじゃなくて体育館でドッヂしてぇ」



ヨシタケの問いにタダクニが答え、ヒデノリは雨よ降れと両手を握って唱えるように呟く。ドッヂもサッカーのキーパーも同じじゃん、とタダクニが呆れたように言うなかヨシタケは頭を抱えた。
どうしよう、みょうじさんに傘あげたから今傘はない。まぁでも60%だし、降らないことを祈ろう。



「そーいや、ヨシタケ、みょうじさんに傘あげたんだっけ」
「あ、あぁ…まぁな」
「じゃあ今日も傘ねぇとか?」
「…あぁ、まぁな…」
「マジで?ヒデノリは傘ある?」
「おう、確か鞄の中にしまったはず………」



ヒデノリは自分の鞄をゴソゴソと漁り始めるが、突然ピタッと動きを止める。ヨシタケやタダクニはまさか、と青ざめた。



「玄関に置いてきちゃった!」
「ヒデノリもねぇのかよ!」
「いいじゃねぇか。タダクニは傘あるんだろ?雨降ったら三人で帰ろうぜ!」



開き直るヒデノリにタダクニは額を押さえてため息をつき、ヨシタケは顔を引きつらせた。


結局体育の時間は雨は降らずヒデノリは残念がっていたが、キーパーとしては大活躍していた。それを遠目にヨシタケは空を見上げる。雨が降りだしそうなこの天気はあの日を思い出させた。



「…元気にしてっかなー…」



何気なく呟いたそれにヨシタケはハッとする。今自分は何を言ったんだろう。誰のことを指して元気にしてるかなと呟いたのだろう。



「みょうじさんのことか?」
「うげっ、も、モトハル…」



ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて近付いてくるモトハルにヨシタケは眉間にシワを寄せる。聞かれてたのか、とわかると急に恥ずかしさが込み上げてきた。



「あの後ちゃんと家まで送ったか?」
「あぁ」



本当は家まで送っていないのだが、咄嗟に送ったと嘘をつく。家まで送らせてくれなかったと言ったらきっとバカにされるだろう。
モトハルは片手をポケットに突っ込み、ヒデノリとミツオの対決を見つめる。ヨシタケもモトハルにつられて二人の対決を見つめた。



「唐沢や副会長も気にしてたぞ」
「マジで?」
「あぁ、あいつら口では言わないがそれなりに気にしてる感じがした」
「へぇー…聞いてこないところが空気読めてるよな」
「だな。ま、いつかは話さなきゃいけないんだし、そん時は覚悟しとけよ」
「…あぁ…」



そりゃいつまでも内緒にしておくわけにはいかないだろう。が、やっぱりなんかそういう系を言うのは恥ずかしい。別にやましい関係ではないから恥ずかしく感じる必要はないのだが、今モトハルと話をしてるこの間もこんなに恥ずかしく感じるのだから、きっと皆に話すときも恥ずかしくなるだろう。

そう思ったヨシタケは、ん?と首を傾げる。やましい関係ではないのだから恥ずかしく感じる必要はない、なのに恥ずかしく感じてしまうのは何故か。

首を傾げて唸るヨシタケにモトハルはジト目でなんだこいつ、と思うのだった。


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