道路沿いから歩道のない道へと二人は歩いていく。雨はシトシトと段々弱まってきていて、なまえは空を見上げる。弱まってはいても空は未だに灰色の雲に覆われていた。
なまえは傘から手を出して雨の降り具合を確認し、足を止める。急に立ち止まったなまえにヨシタケもつられて足を止め、なまえに視線を移した。



「もうこの辺でいいよ」
「…え」



なまえはヨシタケを見上げてはにかむ。そんななまえにヨシタケは少しだけ胸が高鳴り顔をフイとそらしモゴモゴと口を開く。



「いえ、家の前まで送っていきます」
「大丈夫、もうすぐそこだから」
「でも」
「それにこのくらいの雨なら濡れてもたいしたことないし」
「………」



そう言われて何も言えなくなるヨシタケに、なまえは傘から出て振り返る。



「ごめんね、わざわざここまで送ってくれて」
「えっ、あ、いやこちらこそなんかすんません」
「ふふ、なんでヨシタケくんが謝るの」



そりゃこうなってしまったのは自分が話しかけたせいで、いや友人が変なこと企んだせいもあるけれど。
そんなこと言えるわけもなくヨシタケは苦笑していると、ふと前からトラックが走って来ているのが見えた。道路の幅からして人一人分くらいしかトラックと壁の幅がない。なまえも車の音に振り返ろうとするが、それより先にヨシタケがなまえの腕を引っ張り自分のほうへ引き寄せた。



「わっ」



ヨシタケに引っ張られなまえはそのままヨシタケと壁に挟まれる。ブゥン、とトラックの音が過ぎていくのを聞きなまえは顔を上げた。



「あっぶねぇなぁ」
「!」



顔を上げるとヨシタケの顔がすぐ近くにあって、それは傘に入れてもらっていた距離よりも近かった。なまえは顔に熱が集まるのを感じる。
ヨシタケはトラックの後ろ姿を見送ったあと、あっ、という声をあげてなまえのほうへ顔を向けた。



「!わ、わりぃ」
「えっ、あ、こちらこそっ」



謝りながら腕をパッと離す。意外に距離が近かったからか、ヨシタケも驚いてしまった。なまえは少しだけ頬を赤くさせて気まずそうに俯く。
トラックが危なかったとはいえみょうじさんの腕を咄嗟に掴み自分のほうへ引き寄せたのはまずかったか。そう思ったヨシタケは溜め息のかわりに頭をかいた。
ここは謝っておこう。



「急に引っ張ったりしてすみません…」
「いやいやそんな、私のほうこそごめん」



両手をブンブン横に振って謝るなまえに、ヨシタケは首を傾げる。なんでこの人が謝ってるんだ。
なまえが顔を上げるのを見てヨシタケはハッとする。少し顔が赤い。この短時間で熱でも出たのか、とヨシタケは何気なく問い掛けた。



「みょうじさん、顔赤いんですけど大丈夫すか?」
「えっ!?顔赤い?!あはは、気のせい気のせい!」



ヨシタケは考えた。
この人はこう言っているが実際は熱があるかもしれない。体温計がないので熱があるかはわからないが、現に顔は赤くなっている。もしかしたら風邪を引き始めたかもしれない。
そんななまえを放っておくわけにはいかず、ヨシタケは話しかけた。



「やっぱ家の前まで送ります」
「えっいや、でも悪いよ!しかももう家すぐだし」
「…じゃあ、これ」
「!」



ヨシタケは傘をなまえ突き出す。なまえはわけがわからないという顔をしてヨシタケを見上げた。



「え?あの、ヨシタケくん」
「早く受け取ってください」
「あ、は、はい」



言われるがまま傘を受け取るとヨシタケは、体、大事にしてください、と言い捨てなまえの前から走り去る。なまえはヨシタケの姿が見えなくなるまで呆然と後ろ姿を見送るのだった。



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