「ちょ、見えねぇよ、もっと傘あげろって!」
「いやバレるだろ!」



普通の傘よりも少し小さい折り畳み傘に、男子高校生が二人。しかも何やら喧嘩のような言い合いをしている。



「なんで俺までこんなこと…」
「あいつがちゃんと送っていくか見届けなきゃいけねぇだろ、友人として!」
「別に後から聞けばよくね?」
「どんな話してるか生で聞いてみたいだろ、友人として!」
「いやそこ友人として、はいらねぇし」



力強く拳をつくり力説するヒデノリに、タダクニは顔を引きつらせる。ヒデノリがこうもノリノリになってしまってはもう後戻りはできない。めんどくさいことになった、とタダクニはこめかみを押さえる。
少し先を歩くヨシタケとみょうじさんの後ろを見つめるヒデノリに、どうした?とタダクニが首を傾げて話し掛けた。羨ましいのだろうか。



「…聞こえねぇ」
「は?」
「雨のせいで、いや傘にあたる雨のせいで!会話の内容が!全く!聞こえねぇ!どうする!タダクニ!」
「それ何キャラ!?つーか言い直す必要ねぇよ!」



騒ぎ出すヒデノリを何とか宥めていたら、先を歩いていたヨシタケとみょうじさんがいつの間にかいなくなっていた。ヒデノリもそれに気付いたらしく、さあぁと顔を青くさせて傘から飛び出す。



「お、おい!ヒデノリ!?」
「ヨシタケー!俺を置いてどこに行く気だー!」
「ちょ、んな大声で叫んだら気付かれるだろ!」



てか自分から送り出しといて何言ってんだアイツ!
タダクニの制止を振り切り、ヒデノリは忙しなく顔を動かしてヨシタケとみょうじさんを探す。そんな必死にならんでも、とタダクニはドン引きするが一応友人としてヒデノリに駆け寄る。
姿が見当たらなかったのかヒデノリは肩をガックリ下げて俯いた。



「うぅぅ…」
「何も泣くことないだろ…」
「…そうよね…私にはタダクニがいるもの…!」
「…え?な、なに…」



また何かのキャラに変貌したヒデノリに、タダクニは目を丸くさせてヒデノリを凝視する。今度はなんの設定でなんのキャラなんだ、とタダクニは混乱するばかりだった。



「行きましょう、タダクニ!そして明日ヨシタケをやっつけましょう!」
「え、え?!あー!もう何が何だかわかんねぇよ!」



ヒデノリのカッターシャツが濡れてカッターシャツの下に妹のらしき下着を見たタダクニは、ちょっと友人として考え直そうかなと思うのだった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -