自分の友人の後ろ姿を呆然と見つめる。その後ろ姿が見えなくなると俺は我に返り、ゆっくりと振り返った。



「………」
「………」



また二人の間に沈黙が流れる。俺は頭を抱えたくなった。なんなんだあの二人。何を考えてんだあの二人。この状況をどうするかない頭で考えていたら、みょうじさんが眉を下げて口を開いた。



「…行っちゃったね」
「…そう、すね」



あいつら後でシメる。
顔を合わせるのがなんだか恥ずかしいので、顔を外へと向ける。雨は未だ止む気配などなく、むしろさっきより酷くなっているような気がした。本当に今日はついてない。



「私はいいから、ヨシタケくんはあの二人追いかけなよ」
「え…」



みょうじさんは顔を俯かせて、手を後ろに組む。おい何女の子に気を遣わせてんだよ自分。そう自分に突っ込む。今さらあいつらを追い掛けたところで、ヒデノリ辺りに情けねぇなーと言われそうだ。なんかそれも嫌だ。それにみょうじさんは姉さんの友達だ。ここで送らず一人のこのこと帰ったあと、みょうじさんが姉さんにこのことを告げ口でもしたら俺は姉さんからも情けないと言われてしまう。それも絶対嫌だ。
まぁ、みょうじさんは告げ口とかするような人には見えないけど。



「や、この際だから送っていきます」
「えっ、いやいいって!私走って帰るし」
「…送っていきます」
「でも」
「送っていきます」
「……お、お願いします…」



真剣な顔をして言う俺をみょうじさんはどう思うだろうか。何かここで気のきいた言葉を言えればよかったのだが、生憎俺は女の子の扱いに慣れていない。
俺はコンビニを出て傘を開きみょうじさんに振り返る。みょうじさんは俯きながらそろそろと近づいてきて、お邪魔します、と言って傘に入ってきた。うわ、何それ、なんか変な感じする。



「…家、どっちですか」
「あ、えーっと、あっち…かな」



指を指して方向を示すみょうじさんに、俺はその方向へ顔を向ける。その方向は俺の家の通り道でもあった。案外家が近い?そう思いながらじゃあ、と一歩を踏み出した。












「………」
「………」



俺もみょうじさんも無言のままひたすら雨の中を歩き続ける。こんなときどうすればいいんだ。はぁ、こんなことならタダクニとヒデノリとこういうシチュエーションもやればよかった。まさか自分が女の子を送っていく日が来るなんて。…姉さんの友達っていうのが少し引っ掛かるけど。



「…なんかごめんね」
「えっ、いや、全然…」



いいっすよ、と小さく呟く。バカだ俺、普通ここは男の俺がリードするべきだろなに女性に気を遣わせてんだ。傘を持つ手に力が入る。目線だけをみょうじさんのほうへ向けるがみょうじさんの表情は全く見えない。あーどうしよマジで。



「あ、こっち」
「!はい」



右に指を指し、方向転換をする。再び沈黙が流れ、俺の中で焦りがでてきた。何か、何か喋れ、つーかなんか話題よ出てこい降ってこい!



「みょうじさん」
「ヨシタケくん」
「………」
「………」



しまった、かぶった。
言葉がかぶったことに驚き、俺は思わずなまえさんを凝視する。すると、みょうじさんまで顔をあげてきて、バッチリ目が合ってしまった。ち、近い…!



「ごご、ごめん」
「いや、俺のほうこそ…」
「ヨシタケくんからどうぞ!」
「え、いや、みょうじさんのほうからどうぞ!」



そこからは二人の攻防戦。どっちが先に言うか言わないかで俺もみょうじさんもなかなか引き下がらない。そんなやり取りをしていたら不意に視線を感じ、そこに視線を向けると足が止まった。



「…?ヨシタケくん…?」
「………」



視線を向けた先には俺のクラスメイトが、俺たちのことをガン見していたのだった。



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