ヨシタケくんがあの男の子たちを連れて奥に行ったので、どうすればいいか悩んだところとりあえず雨宿りでもしよう、という結論にたどり着いた。そしてちょうど入り口近くにあるアイスケースに目が入った。



「アイス…」



ポツリと呟くと、そのアイスケースに近付き中を覗き込む。そこにはずらりと並んだ色んな種類のアイスがあった。ふと新発売の文字に私は注目する。おいしそうだ。



(買おうかな…いやでも溶けるかな…)



買うか買わないかですごく悩む。新発売という文字に弱い私は眉間にシワを寄せてアイスケースの中を見つめる。端から見たらどう思われているんだろう。いや、今はそんなこと気にしてはいられない。



「……あの」
「…うーん…」
「…あのー」
「んー…ん!?な、なに!?」



誰かに話し掛けられたが、私じゃないと思って一度は反応せずスルーする。しかし、二度目に話し掛けられ顔をあげるとそこには怪訝な顔をしたヨシタケくんが立っていた。やばい、見られてた、恥ずかしい!



「あ、これは、その、し、新発売の札に気をとられていたわけじゃなくて!」
「(新発売の札に気をとられてたのか)…あー、そうなんすか」



突然話し掛けられたのと羞恥心が込み上げてきて、アワアワとパニクってしまう。そんな私をヨシタケくんはきっと変な女だと思っているに違いない。なんで友達の弟にこんな醜態を曝さなければならないのだろう。もうアイスのことなんかどうでもよくなってきた。



「そ、それにしてもヨシタケくんどうしたの?」
「あ、えーっと…みょうじさん傘無いんですよね?」
「う、ん。そう、ですね」
「…俺、友達に入れてもらうんでこれ使ってください」



スッとヨシタケくんが私たに差し出したのは、普通のビニール傘で、私は目を丸くさせてヨシタケくんを見上げた。視線を私からずらして照れ臭そうに傘を差し出すヨシタケくんに、思わず胸がキュンとしてしまう。まさか友達の弟に胸キュンするなんて、今まで生きていたなかで初めての経験だ。
私に傘を貸してくれるのはとても嬉しいけれど、ヨシタケくんにそんな気を遣わせてしまい逆に申し訳ない気持ちになる。



「あ、あの嬉しいんだけどその、友達にも悪いし…」
「別に大丈夫ですけど」
「いやでも…」



今いち踏ん切りがつかない。ヨシタケくんはきっと善意で言ってくれているはずなのに、何を私はモタモタとしているんだろう。いつまでも受け取らない私にヨシタケくんは眉をピクリと動かした(ような気がした)。



「何をそんな渋るんすか」
「えっ!?いや、だってヨシタケくんやその友達にも悪いし」



なんでこんなとき自分は素直になれないんだ!せっかくの善意を無駄にする気か!何を遠慮する必要があるんださっさと受け取れや!
1人で悶々としていると、ヨシタケくんの友達の茶髪眼鏡くんがヨシタケくんの名前を呼んだ。私もヨシタケくんも茶髪眼鏡くんのほうへ視線を移す。



「俺ら先帰っから、ヨシタケはその人送っていけよ」
「「はぁ?!」」



茶髪眼鏡くんはニヤニヤしながらヨシタケくんに言う。側にいる黒髪の子は二人の様子をハラハラしながら見守っている。ちょっとどうしてそうなるの!?



「何でそうなんだよ!」
「だってタダクニの傘折り畳みなんだぜ?そんな傘に三人はキツいと思ったからさー、なぁ、タダクニ」
「あ、あぁ…(悪いヨシタケ…)」
「別にキツくてもいいじゃねぇか!」
「いーや、良くない。少なくとも俺にとっては物凄く良くない」
「なんでだよ!」
「……下着見えちゃうからなぁ…」
「下着っておまっ、また勝手に妹の…!?」
「し、下着?」



茶髪眼鏡くんはほんのり頬を染めて、下着がどうとか言い出した。え?パンツならともかく、今時の男子高生って下着なんかつけてるの?妹のって言った黒髪の子は顔面蒼白といった感じで、まさか妹の下着なわけないよね…と疑心暗鬼に陥る。私が呟いた下着?という言葉に、慌ててヨシタケくんが黒髪くんの口を塞いだ。その行動、逆に怪しまれると思うんだけど。



「じゃ、ヨシタケ、そういうことで俺ら行くわ!」
「は!?いや、そういうことでじゃねぇし!」
「ま、また明日な、ヨシタケ」
「あ!おい、タダクニまで!ちょ、まっ」



二人はコンビニの外に出たかと思ったら、ヨシタケくんを振り切るかのようにスタートダッシュをしてコンビニからあっという間に居なくなってしまった。ポツン、と残されたヨシタケくんの背中が少し寂しげに見えるのだった。



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