「なまえー!帰るよー!」


田中に呼ばれ、はーい!と大きく返事をするが、すぐにハッと我に帰る。そういえば今日委員会があるんだった。
私は廊下で待っている田中の側に駆け寄り、委員会があることを伝え先に帰っててと言うと、田中はあぁそう、わかったと興味無さそうに返事をした。


「じゃあ先帰るわ」
「うん、ごめんね」
「…ま、委員会頑張って」
「ありがと」


田中はそう言うと、歩きながらヒラヒラと手を振って歩いていってしまった。それを私は少しだけ笑って見送る。
田中はつっけんどんなところもあるけど、案外かわいいところもあるのを私は知ってる。だから田中と一緒にいるのは楽しいし面白い。…たまに無茶苦茶なこともするけれど。
そういえば田中の弟のヨシタケくんも、なんだかんだ優しい子だったなぁ。


「…はぁ、委員会めんどくさ」


私はそう呟くと鞄を掴み、委員会が開かれる教室に向かった。







「あちゃー…」


委員会が長引いてしまい、終わったのは夕方6時を回っていた。しかも途中から突然雨が降り出してしまう始末。校舎の玄関で空を見上げてどうしたものかと項垂れる。空は黒い雲で覆われていて見る限り当分やみそうにないだろう。
夜は雨だと今日の朝ニュースで見たが、まさか委員会でこんなにも遅れるとは思わなかった。それにあの朝のニュースも夜に雨が降るって言っていたのに、夕方から雨だなんて、と天気予報を恨む。


「仕方ない…」


高校から駅は近いから駅までは走って、自分の降りる駅のコンビニで傘を買おう。
そう思った私は鞄の持つ手にグッと力を入れ、雨の中を走り出した。







「うっわ最悪…」


駅を降りた私は駅前のコンビニに立ち寄り傘を探すが、傘らしきものが見当たらない。いつもなら何本もあるのに今日に限って売り切れになっていた。ハァ、と肩をがっくり落とし、もうこのまま濡れて帰るかと諦めてコンビニを出ようとしたら、後ろから誰かに声をかけられた。


「…みょうじ、さん?」
「え…あ!田中の弟の…」
「どもっす」


振り返った先には田中の弟、もといヨシタケくんが制服姿で立っていた。なんというタイミング。ヨシタケくんは私を見るなり、パッと目線をそらした。


「…見えてますよ」
「え!?あ、あぁ、キャミソールね。そんなびしょ濡れになったわけじゃないし、このくらい気にしないよ」
「そういう問題?!」


そりゃ多少は恥ずかしいが、私の着ているキャミソールは真っ黒の、しかも色気が全くないやつだ。田中にそのキャミソールやめたら?と言われたこともあるが、私は結構このキャミソールを気に入っているのだ。何よりこんなときに服がどうとか気にしていられない。


「………」
「………」


黙り込むヨシタケくんに、私まで黙り込んでしまう。私とヨシタケくんの間に変な空気が流れ始める。この状況をどう打破すればいいのかとない頭を必死に働かせていたら、ヨシタケくんの後ろから茶髪の男の子と黒髪の男の子が近付いてきた。


「おい、ヨシタケー?何してんの?」
「!いや、別に…」
「その人、知り合い?」
「「えっ」」


思わずヨシタケくんとハモってしまい、ヨシタケくんをチラ見する。茶髪の男の子と黒髪の男の子が私に視線を移してきた。
どうする?ここは知り合いと言わず切り抜けるか?いや、でもヨシタケくんがなんて言うか気になる。
迷ってる私をよそに、ヨシタケくんが二人を連れて私から少し離れた。


「?」


何やら3人でコソコソしている。時折茶髪の眼鏡くんが私をチラチラと見てきて、なんだか居心地が悪い。この場合、自分はどうしたらいいのだろうか。


(帰ろうかな…)


外を見ると未だ雨は降り続いていた。

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