ヨシタケくんが私を部屋に入れてくれて5分が経とうとしていた。未だ私たちの間に会話はない。そりゃこんな状態で話すことなんてないよな。私はちらっとヨシタケくんを盗み見てみた。何故かヨシタケくんも正座をして、どこかそわそわしていた。時折携帯の画面を覗いてはポケットにしまい、とそういう動作を何回もしていた。


(あ、また携帯出した…と思ったらすぐポケットに戻した)


挙動不審なヨシタケくんが段々面白く感じてきて、口元をニヤニヤとさせながら(もちろんヨシタケくんに見えないように)ヨシタケくんを観察する。そんなに時間が気になるのだろうか。時間を確認したところで案外時間ってものはすぐに経ってはくれない。逆に長く感じるだろう。


「…あの」
「!はいぃ?!」
「げ、ゲームしていいっスか」
「ど、どうぞどうぞ!私にお構い無く!」


一瞬盗み見ていたのに気付かれたと思い返事が裏声になってしまったが、どうやら違ったらしい。ていうか裏声!なんでこういう時に裏声出んの!?空気読めよ裏声!
そう心の中で突っ込んでいるのも露知らず、ヨシタケくんはコソコソとゲームのカセットを漁る。お、スーファミ(スーパーファミコン)か、懐かしいな。


(!おぉ)


ヨシタケくんはスーファミのカセットの中からスーパーマ○オカートを手にし、本体へとセットする。懐かしい、スーファミのマリカー。と私は興味津々にそれを眺める
ゲーム画面が出てくるとヨシタケくんはヨッシーを選択し、スペシャルカップをやり始めた。


(…!う、うまっ!?)


急なカーブも何のその。ヨシタケくんの鮮やかなボタン捌きであっという間に一位をもぎ取っていた。どんだけ練習したらそんなに上手くなるんだよ!と口には言えないので心の中で突っ込む。タイムもめちゃくちゃ速いし!
久し振りにやりたくなってきた私は段々ウズウズしてきた。うわぁ、あそこのマップめちゃくちゃめんどくさいんだよね。あ、あそこ得意だった!てかヨシタケくん上手すぎでしょ…。


「……あの」
「え!?あ、な、なに!?」
「これ…やりたいんですか?」
「えっ!?」


図星をつかれた私は顔に熱が集中する。というより、どうして私がやりたいって思ったんだ!口には出していないはずなのに。


(画面越しにやりたそうに見えたんだ…なんて言えるわけねぇ)
(ヨシタケくん、まさかゲームしながら私を盗み見見ていた、なんてあるわけないよね…?)


ヨシタケくんはもうひとつのコントローラーを本体にさして、私に差し出した。それをありがとうと受け取り、何故か二人でマリオカートをやり始めるのだった。


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