少しだけ似てる二人



 ナギと別れたあと、エースは室内から室外へと出る。照りつける太陽の陽射しに目を細めた。
 太陽の明るさに慣れると、目の前に人工的に作られた大きな噴水が目に飛び込む。初めて見た噴水に私は呆気にとられてしまった。空に伸びる水と辺りに飛び散る水飛沫が綺麗で思わず見惚れてしまう。そんな私を他所にエースは噴水に近付いた。


「ほら」


 そう言うとエースは私を手に取り、噴水の前へ出す。噴き出している水を呆然と見ていると噴水の水飛沫が私の身体に飛んできた。冷たい水に反射的に飛び跳ねる。


「ピッ…」
「……(かわいい…)」


 ふとエースを見るとエースは口元に手を当てて肩を小さく震わせている。どうしたのだろう、と首を傾げていると、エースに誰かが声をかけた。ナギではない声に私は身を縮こませる。


「エース?何してるんだ?こんなところで」
「あぁ、いや、ちょっとな」


 その人物はエースの知り合いらしい。ちらりと盗み見るとその人物とカチリと目があってしまった。その人は私を見て驚いたように目を丸くさせる。


「エース、この雛チョコボってあの時の?」
「そうだよ」
「そうか。聞いてはいたけど、もう動けるくらい回復してたんだな」
「ああ」


 その人は安心したように笑う。外見こそ全く異なっているがその笑顔はエースに少し似ていた。けれど初めて見る人間に少し恐怖心を抱いた私は早くエースの側に行きたかった。
 エースは私を肩の上に戻そうとすることもなく、その人と話始める。


「エイトは鍛錬帰りか?」
「まぁな」
「毎朝鍛錬してるんだろ?エイトは偉いな」
「そうか?普通だと思うが」


 エイトと呼ばれた人はあっけらかんと言う。この人の名前はエイトか、と思いながらエースの肩までどう行こうか考えていると突然私の上に影ができた。驚いた私は咄嗟に羽を動かしてエースの手から逃れようとする。気が付いたときには身体が水に浸かっていた。


「「あっ」」


 二人の声が耳に届くが、私は溺れまいと水の中でもがく。しかし身体が沈むことはなかった。
 不思議に思った私は落ち着きを取り戻し羽を仕舞う。辺りを見渡してみると、なんと私は水の上に浮かんでいた。ふとエースたちのほうを見ると、エイトが眉を八の字にさせて私を見て口を開いた。


「急に驚かせてごめんな…」
「いや、先に言っておくべきだったな。この雛、人見知り激しいんだ」
「そうだったのか…」


 肩を落とすエイトにエースは苦笑する。そんなに落ち込むことはない、と励ますエースを横目に私は水の上ですいすい泳ぎ始めた。水が心地よくて、凄く気持ちが良い。
 泳いでいる私に二人が凝視していたことなど気にも止めなかった。


「気持ち良さそうだな」
「そうだな…(あの姿かわいいな…)」
「そういえばなんで今日はこの雛チョコボと外にいるんだ?」
「え、あ、いや、あの雛チョコボが外に出たそうだったから」
「エースは雛チョコボの気持ちがわかるのか?」
「わかるっていうか、あの雛チョコボ、分かりやすいんだよ」


 分かりやすい?と首を傾げるエイトの側に水の上から出てゆっくり近付く。さっき私を驚かせた仕返しに私が今度はエイトを驚かせてやるのだ。
 私は水に濡れた身体を思いっきり振るわせる。私から飛んだ水飛沫はエイトの手目掛けて飛んでいった。


「うわっ!冷たっ」
「ピーッ」
「はぁ、全く…」


 身体から水滴を取ったあと、私は溜め息をつくエースの元へ走る。エースの元に着き振り返るとエイトは呆然としていた。そんなエイトに私は得意気な顔で羽をひとつ羽ばたかせた。


「………」
「ごめん、エイト…」
「ふ、ははは!やられたよ。なかなかやるな、そのチョコボ」


 笑うエイトにエースも笑い、私の身体を掬いあげる。エースを見上げると、エースは笑みを浮かべながら口を開いた。


「エイトは僕の仲間だ、悪い奴じゃないからな」
「…ピィ」
「ほら、仲直り。エイト、手を出して」
「えっ、大丈夫なのか?」
「大丈夫さ」


 そう言いながらエイトの手に私を乗せる。少しだけ緊張しながらエイトを見上げると、エイトはエースみたいに優しく微笑んでいた。


「さっきは驚かせて悪かった、ごめんな」
「………」
「やり返してくるなんて思わなかったよ。お前、なかなかやるなぁ」
「…ピピッ」
「!…これからも仲良くしてくれるか?」
「ピッ!」
「……エース、これは許してもらえたのかな」
「あぁ、許してもらえたと思うよ」


 エイトと私の受け答えにエースは笑い、エイトもつられて笑う。エイトの笑う顔はやっぱりエースに似ているなと、そんなことを思いながら私は二人を見上げていた。

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