見つけて捕まえた



「エースさんですか?今日はまだ教室に来ていないですよ」
「そうか…」
「それにしてもなんでジャックの頭にチョコボがいんの?」
「あー…これには色々あったんだよー」
「まぁジャックの自業自得というやつだな」
「ジャックの頭、チョコボの巣と化してますね。違和感がありません」
「いやいや、違和感ないとか困るんだけど」


 ジャックの頭の上から皆を見下ろす。なかなか絶景だった。
 私とジャックとエイトは教室というところにきたが、そこにエースの姿はなく、代わりにデュースとケイト、トレイがいた。エースがいないことにガックリしながらジャックの髪の毛をツンツン触る。ジャックが触るなぁ!と騒いでいるがお構いなしだ。


「エースならまたチョコボ牧場にいるんじゃない?」
「…そうかもな。チョコボ牧場に行ってみるか」
「ああぁぁ…セット乱さないでぇー!」
「ますますチョコボの巣と化してきましたね」
「ジャックさん、に、似合ってますよ!」
「…無理して褒めてるのバレバレだよ、デュース」


 ふとトレイの髪の毛を見ると、トレイもまた綺麗な金髪をしていた。トレイの髪の毛はジャックみたいに髪をたてているわけではなくストレートだった。それを見てエースの顔が頭に浮かぶ。
 今、エースはどこにいるんだろう。昨日見た悲しそうな表情を思い出して、私は焦燥感に駆られる。早くエースの顔が見たい。エースの声が聞きたい。


「じゃあチョコボ牧場に行くか」
「ほーい」


 そう言いながらジャックが動き出す。教室を出た私たちは大きい広間に出て、その真ん中にある変な床に乗ると、昨日と同様一瞬でチョコボ牧場に着いた。
 チョコボ牧場にいる二匹の雛チョコボが勢いよく駆け寄ってくるのが目に入る。しかし、辺りを見渡してもエースの姿は見当たらない。
 チョコボ牧場にいないならどこにいるんだろう?そう思いながらエイトを見ると、エイトは腕を組ん何やらで考え込んでいた。そこにヒショウが私たちに話し掛けてきた。


「珍しいな、エース以外に0組がここに来るなんて。なんか用か?」
「…ここにエース来なかったか?」
「エース?いや、今日はまだ見てないな」
「えー…ここにいないんならどこにいるんだろう?」
「…というかジャックのその頭にいるの、エースのチョコボだよな?あ、それでエースを探してるのか」


 私を見上げるヒショウにジャックが「そうそう」と相槌を打つ。エースがいなくて気が気でない私はジャックの髪の毛を引っ張った。ジャックは慣れたのか痛いと言わなかった。少し面白くない。
 ヒショウと別れた私たちはその後、色々な場所に向かった。本が沢山ある場所や、良い匂いのするところ。物騒なものが置いてある場所や眺めのいい場所に、人間が寛いでいるところなど。隈無く探してもエースは見つからなかった。


「エースが見つからないなんて珍しいよねー」
「あぁ…」
「もしかしてもう部屋に戻ってたりして」
「…多分だけど、エースはあそこにいるかもしれない」
「えぇ?あそこって?」


 そう言うジャックにエイトが視線を向けると、何か勘づいたのか「あぁ、あそこねー」と呟く。あそこってどこだろう、と首を傾げながらジャックとエイトはどこかに向かった。
 たどり着いた先は薄暗い場所だった。少し寒くて、私は身を縮める。さっき回った場所と違い、ここの空気は淀んでいて薄気味悪かった。


「ここいつ来ても気味悪くて嫌だなぁ」
「ジャックでも苦手な場所があるんだな」
「そりゃあねぇ。空気が嫌なんだよね、ここ」


 そう言うジャックに私は同感だった。薄暗いなか、少し歩いていくとジャックが「あ」と声をあげる。私は顔を上げて立ち上がり前を見据えると、エースらしき姿が目に入った。


「いたっ、ちょ、え」


 居ても立ってもいられなくなった私は足を蹴って小さな翼を上下に振る。何とかジャックから降りた私はエースに向かって一直線に走り出す。ジャックの声に気付いたのか、エースが私たちの方に顔を向けた。私は床を思いきり蹴り翼を広げる。


「うわっ!」


 エースの胸に飛び込むと驚く声が耳に入ったが、エースは私を落とすことなくちゃんと落ちないように支えてくれた。顔を上げてエースを見上げる。
 やっと見つかったことに安堵しながら、驚いた表情をしているエースに向けて私は鳴いた。


「ピィ」
「…僕を探してたのか?」
「ピッ」
「そうか…ごめんな、一人にさせて」


 エースは眉尻を下げて柔らかく微笑む。そして私の頭を優しく撫でた。
 久し振りに触られたからかくすぐったくなり、目を瞑って撫でられる感触を堪能する。そこへジャックとエイトの声が耳に入った。


「やほー、エース」
「会えてよかったな」
「ジャック、エイト…なんでチョコボと一緒に居たんだ?」
「廊下歩いてたらチョコボが脱走してたんだよー」
「脱走?まさか部屋から出たのか?」


 そう言いながら私を見るエースに、私は首を縦に振る。それを見てエースは眉を寄せて「きちんと扉閉めたはずなんだけどな…」と呟いた。


「で、エースを探してるようだったから、オレたちがエースを探すの手伝ってたんだよ」
「そうだったんだな。なんか迷惑かけたみたいですまない…」
「いや、迷惑だなんて全然思ってないさ。だからエースも気にするなよ」
「…ああ、ありがとう」


 微笑み合う二人を見上げながらふと、硝子のほうに顔を向ける。硝子の向こうにいる誰かに気付いた私は体が硬直した。
 エースばかりに気をとられて気がつかなかったけれど、ここは昨日、エースとマザーが話していた場所だった。

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