個性的な人たち



 ジャックとエイトが談笑しているなか、エースも二人の談笑に相槌を打ちつつ私の体を撫でている。エースに撫でられるのは嫌いじゃないし、むしろ好きだからいいのだけれど、くすぐったい気持ちでいっぱいだった。
 不意に聞こえた扉の音に、思わず扉のほうを振り返る。目に映ったのは女の人の姿だった。三人いるうちの一人が「うーん」と言いながら腕を真上に上げる。


「はぁ〜ねむ〜い。もっと遅くから授業してほしいなぁ〜。デュースもそう思わない〜?」
「わたしは今のままでも十分ですよ」
「デュースは真面目だねぇ〜」
「シンクが不真面目なだけだ」


 緩い喋り方にちらりとジャックを見る。なんかどことなく似てる気がした。その三人は周りに挨拶しながら部屋の中心へとやってくる。クイーンやサイス、ケイト以外にも女の人がいるんだと思いながら見ていたら、銀髪の人がくるりと振り向き私のほうへ近付いてきた。


「エース、この間の子なんだが……ん?…雛チョコボ?」
「あぁ、ほらこの間の任務の」
「あの時のチョコボか。大きくなったな」


 そう言ってフッと笑う女の人は、凄く面倒見の良さそうな人相をしていて、私の中の警戒心が少し薄まる。


「それであいつがどうかしたのか?」
「あぁ…あと数日目を覚まさなかったら覚悟したほうがいい、そう伝えてくれと言われた」
「…そうか。わざわざありがとう」


 そう言うエースにセブンは眉をひそめる。エースを見上げれば悲しそうな表情をしていた。
 なんでそんな表情になるの?あいつって誰?目が覚まさなかったら覚悟したほうがいいって何を覚悟するの?
 そんな思いがぐるぐると私の中を駆け巡る。たかがチョコボの私がどうしてここまで思い入れるのか、自分でもわからない。でも、エースにはそんな顔をしてほしくなかった。
 撫でていた手が止まっているエースに、私は自らエースの手に体をくっつける。元気を出して、そう願いながらエースの手のひらに頭を押し付けた。


「…お前…」
「うにゃ〜!雛チョコボだぁ〜!」


 突然響く黄色い声に体が強張る。ぎこちなく振り返ると、さっき教室に入ってきた中の一人が目を爛爛とさせて駆け寄ってきた。男の人より女の人のほうがまだ警戒心は薄いけれど、流石にいきなり近付いて来られたら防衛本能が働いてしまう。
 私は後退りながらその女の人を見上げた。


「かわい〜!ほらデュース、雛チョコボだよぉ〜」
「わぁ、可愛いですね!あれ、でもどうしてここにチョコボが?」
「このチョコボ、エースに拾われたんだってー」
「へぇ〜、拾われたんだぁ」


 ジャックがそう言うとまじまじと私を見つめてくる。どうすればいいのか戸惑っていると、いきなりエースが私を持ち上げた。ビックリしてエースを見上げると、エースは安心させるように笑みを浮かべ、口を開く。


「驚かせてごめんな。あいつはシンク」
「ん〜?エースは何してるの〜?」
「あのチョコボ、僕らの言葉がわかるんだってさー、頭良いよねぇ」
「そうなんですか?」
「あぁ」


 短く返事をしたあと、エースは女の人の名前をあげていく。ジャックと少し似ている女の人がシンク、優しそうな人がデュース、そして面倒見の良さそうな人がセブンというらしい。こうして見ると、エースの仲間は皆個性的な人たちばかりだと思った。
 シンクは体を左右に揺らしながらずっとにこにこ笑っている。そんなに雛チョコボが珍しいのか、と思っていたらシンクの口からとんでもない言葉が飛び出してきた。


「なんかチキン食べたくなってきちゃったぁ〜」
「?!」
「あーわかるわかるー!」
「!?」
「…お前らチョコボが怯えてるだろ」


 エイトがそう言うものの二人は悪びれなく笑っていた。この二人にはあまり近付かないでおこう、そう心に誓う。二人の様子に、見兼ねたデュースが困ったように私に声をかけてきた。


「シンクさんとジャックさんがごめんなさい…悪気はないんです」
「…ピィ」


 悪気はないと言うデュースに、私は仕方なく答える。チョコボ相手にそんな申し訳ない顔をされてしまったら、なんだか逆に申し訳なかった。
 私が鳴いたことに驚いたのか、デュースは目を丸くさせる。私の鳴き声に反応したのはデュースだけではなかったらしく、シンクがバッと私に振り向き笑顔になった。


「今鳴いたよね〜?すっごい可愛い鳴き声だったあ〜!」
「シンク、声のボリュームを落とせ、チョコボがびっくりするだろう」
「可愛いものは可愛いんだもん、ね〜、デュース〜」
「は、はい…!凄く可愛かったです!」


 可愛い可愛いと持て囃してくる二人に気恥ずかしくなった私は、毛繕いでその場を凌ごうとするが、その毛繕いでさえも可愛いと言われ、結局私は大人しくエースの手でじっとするしかなかった。

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